2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of the precision of b-jet property measurements with neural network and precise measurement of Higgs boson deploying the developed b-jet analysis
Project/Area Number |
23KJ0400
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 碧人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | ヒッグス粒子の精密測定 / VH(Hbb) / LHC-ATLAS実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの新物理モデルでは、ヒッグス粒子の崩壊分岐比を決める湯川結合定数が標準模型から逸脱されることが示唆されている。また、標準模型を有効場理論で解釈するとヒッグス粒子生成の高運動量領域の微分断面積に影響を及ぼす可能性があり、新物理の兆候を捉えられる。それらの有意な影響を実験で観測することで新物理候補を絞り込めて素粒子物理学の将来の方向性を定められるため、ヒッグス粒子の性質の精密測定が必須である。CERNのLHC-ATLAS実験で初めて有意な信号が観測されたベクターボソンと随伴して生成されたヒッグス粒子のボトムクオーク対の崩壊事象は測定精度を高める物理解析が必要である。 本研究では去年度2つのアプローチでヒッグス粒子の生成微分断面積とヒッグス粒子とボトムクオークの湯川結合定数の測定精度を向上させた。 崩壊したボトムクオークが形成するbジェットは複雑な構造を持ちエネルギー分解能が低いため、bジェットのエネルギー分解能の補正を根本的に見直しヒッグス粒子測定の分解能を向上させた。具体的にはbジェットと共に放射するグルーオン由来のジェットを最適に同定しヒッグス粒子系に組み込み戻した。結果的に生成微分断面積の測定精度が最大7%改善した。本結果は国際会議で1回発表した。 実験データを説明するために導入するシミュレーションデータの解析上での取り扱い手法を改善し、誤差評価に必要な全ての情報が考慮されるようにしたため、これに由来する系統誤差評価の正確性にも大幅な改善が得られた。結果的に結合定数測定の系統誤差が29%改善した。本結果は国内学会・会議で2回、国際会議で1回発表した。 長期間現地で検出器の保守運用に携わり検出器の特徴やデータの性質を理解したことも上記の2つの研究を成功させる一因となった。また、本研究での働きを評価されヒッグス粒子の物理解析の将来計画の講演をグループの代表として国際会議で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体的な目標は、新しい解析手法の開発を行い、実験データを使用して新手法の有用性を検証し、ヒッグス粒子の生成微分断面積とヒッグス粒子とボトムクオークの湯川結合定数の測定精度を向上させて、新手法の有用性と共に世界最高精度の最終物理結果を公表することである。そういった点では、昨年度の成果は測定精度の向上まで実施できているとして、本来の研究実施計画に沿った進捗状況である。 しかし、研究内容に関して変更点が2点存在する。 1点目:bジェットの同定効率の改善は他研究員の成果を引用して行い、私はシミュレーションデータの系統誤差評価の正確性向上の研究を実施したこと。 2点目:新型コロナウイルス感染症の流行による LHC-ATLAS 実験運転延期に際して、使用を計画していた令和4年以降の実験データでは統計量が十分ではないと判断したため、令和4年以前に収集された過去4年分の実験データを使用したこと。なお、この実験データでも測定精度の向上を確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、新手法の有用性と世界最高精度の最終物理結果を論文で公表し本研究を完遂することである。また、本研究を様々な国際会議で発表する。 現在、最終物理結果の正当性、妥当性を調査し、必要があれば修正をかけている。論文公表に向けて LHC-ATLAS 実験内の承認に望んでおり、いくつもの手続きを一つずつ確実に進めている。
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Causes of Carryover |
研究進捗の都合により予算検討時に参加を予定していた国際会議を見送ったことが要因である。 次年度は、当該年度での研究実績を様々な国際会議で発表する予定であるため、旅費の使用割合を増やす計画である。
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