2023 Fiscal Year Annual Research Report
広帯域磁気光学分光によるトポロジカル物質の電荷ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
23KJ0411
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 喜大 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカル物質 / 磁気スキルミオン / 磁気光学効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
トポロジカルなスピン構造である磁気スキルミオンに由来した磁気光学効果であるトポロジカル磁気光学効果の観測に成功した。 磁気スキルミオンはナノメートルスケールの微小なスピンの渦であり、そのトポロジカルな性質などから次世代磁気メモリの情報キャリアとして期待されている。これまでスキルミオンの読み取りの手法は極めて限定されており、高速かつ簡易な読み取り手法の開拓が不可欠であった。そこで磁性体の表面での反射光の偏光面が回転する磁気光学カー効果に着目し、スキルミオン物質Gd2PdSi3において磁気光学カー効果の測定を赤外から可視領域で行った。その結果赤外領域においてスキルミオンが発現する磁場・温度領域において磁気光学効果の増強、「トポロジカル磁気光学効果」が観測された。これはスキルミオンのもたらす仮想的な磁場に由来したものである。このトポロジカル磁気光学効果のスペクトルを精査することによって、これがスキルミオンの形成による電子のバンド構造の変化に由来したものであることが明らかになった。さらに、この電子のバンド構造の変化が輸送現象であるトポロジカルホール効果の起源の一部であることが分かった。 今回観測されたトポロジカル磁気光学効果はスキルミオンの光学的な検出の原理となるだけでなく、従来の磁化に由来した磁気光学効果とは起源が異なることから、原子番号の大きな元素に頼らずに大きな磁気光学効果を実現できる可能性がある。
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