2023 Fiscal Year Research-status Report
A Discussion on the Construction Processes and Sustainability of the Local Governments Diplomacy Regimes in Japan and China: From the Perspectives of International Politics and Public Administration
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23KJ0415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
孫 亦云 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 自治体外交 / 国際関係 / 中央・地方関係 / 自治体行政 / 地方首長 / 国際平和 / 地方振興 / 地方自治 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、これまで実施してきた横浜の自治体外交の事例研究をさらに掘り下げ、①国際局の設置目的とその達成状況、②国際的に活躍できる人材の育成と活用、③国際局と他部局との連携、④一般市民や事業者の意識について考察した。例えば、横浜市中央図書館を訪問して横浜市職員録を閲覧し、自治体外交関連の職員のキャリアパスを整理した。また、上海市档案館や上海市図書館を訪問し、横浜・上海の国際交流や友好関係締結に関する公文書や論文を調査した。 第二に、大阪の自治体外交の調査するために、大阪府公文書館を訪問して資料調査を行った。例えば、「大阪府と上海市との友好府市関係の樹立等について」「日中経済技術交流事業」「大阪府・上海市友好交流関連 昭和57・61年」が挙げられる。大阪・上海の友好都市関係締結と横浜・上海の友好関係締結との比較を試みた。 第三に、自治体の海外事務所を調査するために、先行研究の収集や関連機関が公表したデータの収集などを行った。例えば、自治体国際化協会(クレア)のウェブサイトでは、自治体の海外事務所(海外拠点)を地域別にまとめ、それぞれの設置形態や設置年度、主管部課名、職員数、設置理由、主な活動内容などを統計したデータが公表されている。 第四に、日本と中国の行政を比較するために、比較行政学や中国の行政学の先行研究を整理した。例えば、中国の中央・地方関係や地方行政における党の役割の大きさが明らかになった。また、地方財政において。地方行政はある程度の自主権を有している一方、地方財政は地方行政の業績を評価する重要な指標の一つであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、国際政治学と行政学の観点から、自治体外交レジームの構築を試みながら、その持続可能性について検討することにある。そのため、複数の事例研究を通して、国際関係と自治体外交との相互作用を検証するとともに、自治体外交を支える行政のスキルを考察することが重要である。また、日中比較の観点から考察するため、日本と中国の政治・行政全体に関する俯瞰的な知識が必要である。よって今年度は、横浜の自治体外交に関する研究調査や大阪の自治体外交に関する研究調査、自治体の海外事務所に関する研究調査、中国の政治・行政制度に関する研究調査などを実施した。 他方で、本研究は長期的かつ総合的な研究として、いくつかの研究課題に分割され、並行して進展している。個別の研究課題に関しては、長期的な視点が必要であり、一年間の研究調査で結果を出すことは困難である。また、新型コロナウイルス感染症が収束しつつある中で、ヒト・モノ・カネ・情報の国際的流通が回復しつつある一方、対面での自治体外交がオンライン形式の交流に代替されることは、時間的にも金銭的にもあり得ることである。自治体外交の重要度・優先度がどの程度に回復するのかはまだ不明であり、自治体外交の必要性と効果を検証し、今後の動向を見守っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、自治体外交に影響を与える要因を考察する。例えば、国際情勢の変化や中央・地方関係の変化、地方首長個人の行動、市民レベルの突発事件などが各自治体の自治体外交への積極性や自治体外交の効果に影響を与えていると推測できるが、この仮説を複数の事例を通して検証する。また、中国人の日本への好感度や新聞紙・ニュースでの自治体外交の言及回数、プラス・マイナスの報道の数などのデータを通して考察することも考えられる。その他考えられる要因として、地理的位置や港湾・空港の数、産業構造、GDP、人口数、旅行者数、留学生数、公務員の相互派遣の回数、政治家の相互訪問の回数、大学間の友好関係締結の数などが挙げられる。これらの要因と自治体外交との関連性を具体的なデータを通して検証する。 第二に、自治体外交が与えられた影響を考察する。例えば、国際政治・国内政治・自治体行政における自治体外交の位置づけ・役割の変化、そして自治体外交の類型の多様化とその類型内訳の変化を考察し、モデル化を試みる。具体的な手順として、まずは日本と中国それぞれの自治体外交の歴史的経緯を時系列に整理し、いくつかの段階に分かれてまとめる。次に、各時期の特徴を複数の事例・データを通して考察する。また、日本の自治体外交の特徴と中国の自治体外交の特徴を整理し、両者を比較しながらモデル化の可能性を検討する。さらに、両者の異同を整理した上で、韓国や米国、ヨーロッパの自治体外交と比較し、東アジアの自治体外交の特徴を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究調査は書籍の購読やインターネットでの資料収集を中心に行ったため、かつ、充分な事前調査と充分な滞在期間を前提に自治体の現地調査を行ったため、結果的に、現地調査の回数が計画より少なくなった。次年度の助成金と合わせ、現地調査の対象と回数を適切に増やし、日本国内や海外の自治体に行って現地調査を行いたい。
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