2023 Fiscal Year Research-status Report
温暖化による熱帯ウナギの分布域拡大とそれに伴うニホンウナギへの影響評価
Project/Area Number |
23KJ0433
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊井 勇介 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / 地球温暖化 / オオウナギ / 熱帯種 / 分布域拡大 / 種間競争 / 競争排除 / 保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本には、ベトナムから北日本に分布する温帯種のニホンウナギと、インドネシアから南日本に分布する熱帯種のオオウナギ(北太平洋集団)が分布する。今後、地球温暖化に伴い、オオウナギの分布域は北方へと拡大する可能性があるが、これら2種の種間関係は十分に明らかとなっておらず、オオウナギの分布域拡大が、水産有用種であるニホンウナギに及ぼす影響は不明である。そこで本研究では、野外採集・生息環境調査と飼育行動実験、集団遺伝解析を併用し、両種が生息する河川において、オオウナギがニホンウナギの生息地利用に及ぼす影響を多角的に調べることを目的とした。屋久島や種子島の河川における野外採集・生息環境調査の結果から、両島の河川の様々な流域において、オオウナギはニホンウナギよりも流速が速く、河床材料の大きい生息地を利用する傾向があることが判明した。さらに、流速が速く、河床材料の大きい生息地が多い流域ほど、採集個体に占めるオオウナギの割合が高い傾向がみられた。また、両種を同一の水槽に入れて隠れ家の占有率や攻撃行動を調べた飼育行動実験の結果から、オオウナギはニホンウナギよりも高い攻撃性を有し、日中の生息地の占有能力が高いことが示唆された。これらの結果とニホンウナギの単独分布域における既往研究の知見から、オオウナギは、河床材料の大きい生息地からニホンウナギを競争排除し、ニホンウナギが利用可能な生息地を縮小させることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外採集・生息環境調査と飼育行動実験が順調に進み、本研究の目的である「オオウナギがニホンウナギの生息地選択に及ぼす影響の評価」を達成することができたため、おおむね順調に課題が進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2024年度は引き続き野外採集・生息環境調査を継続し、オオウナギとニホンウナギの生息環境データを蓄積してオオウナギがニホンウナギの生息地利用に及ぼす影響をより詳細に評価していく。また、集団遺伝解析により各種の生息地選択性を遺伝的に調べ、オオウナギがどの程度、ニホンウナギの生息地を縮小させうるかを調べていく。野外採集・生息環境調査と飼育行動実験の結果の一部については、現在、論文を執筆中であり、早い段階での公表を目指している。
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