2023 Fiscal Year Research-status Report
回答の時系列変動を除去し個人特性を正確に測定する統計モデルの開発
Project/Area Number |
23KJ0445
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島田 大祐 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 時系列変動 / 信頼性 / 達成度測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
一つの質問紙調査内において,個人特性などの構成概念が変化しない場合を想定することが一般であるが,現実場面においては調査参加者の構成概念が測定期間において動的に変化する場合もある。そこで今年度において,教育工学におけるKnowledge Tracing(KT)という問題を取り扱った。これは,個人がある知識を習得するために様々な問題に取り組んだ学習履歴データから,個人の達成度という構成概念の変化を正確に推定する問題である。この問題に取り組むことで,測定したい対象自体も時系列変動する場合においても構成概念を適切に測定する手法を開発することにつながると考えた。 KTにおいては,KTモデルと呼ばれる統計モデルによって学習履歴から個人の達成度を推定するという実践が一般的である。そのため,この推定値がどの程度適切かを評価することは実践上重要だと考えられる。しかし,KTモデルによる達成度の測定値を評価する手法は確立されていない。そこで今年度は,KTモデルによる知識状態の推定値がどの程度適切か,特にどの程度安定的かを評価する手法を提案することを目指した。具体的には,学力テストにおいて用いられる代表的な測定モデル(項目反応理論,認知診断モデル)の測定の信頼性係数の算出法をKTモデルに拡張することによって,KTモデルによる測定の信頼性係数を計算する方法を開発した。本研究によって,時系列的に変動しにくい構成概念に限らず,時系列変動しやすい構成概念を測定する場合でも測定結果の適切さを評価することができると期待される。なお,回答データから構成概念を測定する統計モデルを今後開発する予定であるが,本手法は新たに開発した手法を多角的に評価することを可能にすると言える。そのため,今年度の研究結果は妥当な測定手法の開発に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回答および構成概念が時系列的に変動する場合における測定モデルの測定信頼性に関する指標を開発したため,今後における測定モデルの開発の基盤を作ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
測定モデルの測定信頼性に関する評価指標を用いて,新たな測定モデルを開発する。また,この指標がどのような要因によって変動しうるかに関して理論的・経験的に検討することで,本指標の有用性を示す。
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Causes of Carryover |
計画当初は,今年度に質問紙調査などの実データ収集をする予定であったが,実際はオープンデータを分析することになった。そのため,この使用しなかった人件費の分が次年度使用額に反映された。 来年度は実データを収集する予定であるため,そのために本助成金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)