2023 Fiscal Year Research-status Report
髄外造血における免疫細胞異常やニッチ構成細胞の解明と、骨髄様造血システムの構築
Project/Area Number |
23KJ0463
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
板橋 歩未 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
Keywords | 髄外造血 |
Outline of Annual Research Achievements |
大理石骨病や骨髄線維症など病的要因により骨髄環境が障害された場合や、慢性貧血、妊娠や炎症下では、脾臓や肝臓をはじめとした骨髄外の組織で代償的な造血である、髄外造血が起こる。これまでの研究で、重度の大理石骨病により髄外造血を呈するRANKL欠損マウスおよび骨芽細胞特異的RANKL欠損マウスの脾臓ではある特定の骨髄球系細胞集団の増加が認められており、この細胞集団は他の髄外造血モデルマウスである妊娠マウスの脾臓でも増加していたことから、当該細胞が髄外造血特異的に誘導される免疫細胞集団であることを明らかにした。更にこの髄外造血特異的免疫細胞集団について遺伝子情報の解析を行い、T細胞抑制能を持つMDSC(骨髄由来抑制細胞)と酷似した遺伝子プロファイルを示すことを発見した。そこで髄外造血特異的免疫細胞におけるT細胞抑制能を検証すべく、T細胞との共培養実験を行ったところ、この細胞集団はT細胞の増殖、分化を有意に抑制し、髄外造血特異的免疫細胞はT細胞抑制能を持つことがin vitroレベルでも明らかとなった。以上の結果より、髄外造血は単に骨髄障害による血球細胞の供給不足を齎すだけでなく、髄外造血特異的免疫細胞の産生により免疫応答を撹乱させ、易感染症などの病態を積極的に引き起こす可能性が示唆された。今後は大理石骨病における易感染性や妊娠時の胎児寛容において髄外造血特異的免疫細胞集団の病理学的関与を検証するとともに、脾臓をはじめとした骨髄外の組織における造血ニッチと骨髄内の造血ニッチを比較することにより、骨髄外でも正常な造血が可能になるシステムの構築を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究者は令和5年度より特別研究員に採用され、髄外造血特異的免疫細胞集団の病理学的関与の解明を目指し、精力的に研究に取り組んできた。髄外造血時の脾臓における免疫細胞の網羅的な解析により、髄外造血により特異的に誘導されるある特定の免疫細胞集団を同定し、更にはこの細胞集団が遺伝子レベル、in vitroレベルでT細胞の抑制能をもつことを解明した。以上のように、申請者は既に髄外造血特異的免疫細胞集団の同定および細胞特性の解明を遂げており、研究計画は概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在ある特定の骨髄球系細胞集団に焦点を当て、正常骨髄、正常脾臓、髄外造血時の脾臓を対象にscRNA-seq解析を進めており、これにより髄外造血特異的免疫細胞に特徴的なマーカー遺伝子や、T細胞抑制機能遺伝子を同定すると共に、髄外造血特異的免疫細胞の産生・分化メカニズムの解明にも取り組む。また脾臓造血ニッチの解析により免疫細胞の分化異常を誘導する因子の探索にも着手する。候補因子に対しては、中和抗体や低分子阻害剤を大理石骨病モデルマウスに投与することで、髄外造血特異的免疫細胞の減少や易感染性の改善が認められるかを検証する。以上より、脾臓の造血ニッチを制御することにより髄外造血特異的免疫細胞の分化を阻止し、易感染性や骨髄線維化病態の改善に貢献することを目指す。
|