2023 Fiscal Year Research-status Report
創傷滲出液中の細胞老化に着目した難治化メカニズムの解明と老化細胞除去効果の検証
Project/Area Number |
23KJ0464
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
滝沢 知大 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 難治性創傷 / 褥瘡 / 細胞老化 / 創傷被覆材 / ドレッシング材 / 看護理工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性創傷では、創部の細胞老化が慢性炎症を誘導し、創傷の難治化を引き起こすことが報告されている。しかし、細胞老化が通常の生体機構として創傷治癒に不可欠であるため、創部の老化細胞除去によって創傷治癒が阻害される可能性がある。そこで、創傷治癒に大きく影響を及ぼす創傷滲出液に着目し、過剰に生じている老化細胞を適切に除去することで、創傷環境の最適化により創傷治癒が促進するのではないかと考えた。 研究開始時点では、難治性創傷の滲出液中の老化細胞の存在や創傷治癒との関係は明らかでなかった。そこで、患者の褥瘡に貼付されていた創傷被覆材から滲出液に含まれる細胞を回収し、細胞老化やSASPに関する遺伝子発現を解析し、翌週までの創面積減少割合との関連を検討した。その結果、ほとんどの褥瘡滲出液中で細胞老化関連遺伝子であるCDKN1Aの発現が確認され、そのCDKN1Aの発現量の多さと創面積割合の小ささが有意に関連していた。これらの結果から、ほとんどの褥瘡の滲出液中で細胞老化が生じており、滲出液中の細胞老化が創傷治癒に寄与する可能性を明らかにした。 滲出液中の老化細胞は治癒促進のための介入ターゲットとなりうると考え、老化細胞除去方法の検討のためのin vitro実験に移行した。老化細胞による創傷治癒遅延モデルが必要であったため、過酸化水素水による老化細胞モデルを用いて、スクラッチアッセイを実施した。老化細胞割合の増加に伴い、創傷治癒が遅延する条件を明らかにし、老化細胞による創傷治癒遅延モデルを確立した。これにより、老化細胞除去方法検討のための実験基盤を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、難治性創傷の滲出液中での細胞老化に着目し、滲出液中の細胞老化が創傷治癒遅延と関連することを明らかにした。さらに、in vitro実験で、過酸化水素水によって誘導された老化細胞の増加に伴い、創傷治癒が遅延するモデルを確立した。これによって、滲出液中の細胞老化が介入ターゲットとなることを示し、その老化細胞除去方法の検討のための基盤を整えたことから、おおむね順調に経過していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で、創傷滲出液中の細胞老化が創傷治癒遅延を生じさせる可能性を示した。そのため、次の段階として、創傷被覆材による滲出液中の細胞老化除去方法を検討し、in vivo実験により創傷治癒促進効果を検証する。
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Causes of Carryover |
いくつかの試薬の納期に時間がかかったため、次年度使用額が生じた。
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