2023 Fiscal Year Research-status Report
植物の細胞能を制御するサイトカイニン依存的RNA代謝の解明
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23KJ0515
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 亜美 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | サイトカイニン / カルス / 分化全能性 / pre-mRNAスプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サイトカイニンによるRNAプロセシング活性制御に着目し、一度分化した植物細胞が脱分化を経て細胞増殖を再開する新規分子機構の解明、さらには、組織培養技術の高効率化を目指して解析を行なっている。2023年度は以下の解析を行なった。 1. シロイヌナズナpre-mRNAスプライシング関連変異体について、サイトカイニン濃度を振った培地で育成あるいは組織片からのカルス誘導を行い、カルス形成能およびサイトカイニン依存的成長の表現型解析を行なった。その結果、植物細胞の脱分化および芽生え成長がサイトカイニン依存的なpre-mRNAスプライシングを介して制御されている可能性を示唆するデータを得た。 2. 胚軸カルス形成におけるサイトカイニンとpre-mRNAスプライシング制御の役割・関係性を明らかにするため、野生型およびrrd4-1変異体の胚軸カルス形成過程のRNA-seq解析を行なった。その結果、rrd4-1変異によって遺伝子発現および選択的スプライシングのパターンがグローバルに変化し、特に、脂質代謝、タンパク質輸送、およびmRNAプロセシングに関わる遺伝子群がサイトカイニン依存的な選択的スプライシングパターンの変化を示すことが分かった。 以上から、植物細胞の脱分化は、細胞増殖の再開に必要な特定の遺伝子群に対するサイトカイニン依存的なpre-mRNAスプライシングを介して制御されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナpre-mRNAスプライシング変異体rrd4-1の胚軸カルス形成過程のトランスクリプトーム解析から、脱分化過程においてサイトカイニン依存的なスプライシング制御がなされる生体内イベント候補を見出した。これら候補のさらなる解析は必要であるものの、今年度の計画については概ね当初の計画通りに進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seq解析を継続して行い、サイトカイニン依存的なRNA代謝異常のプロファイル化を行う。さらに、サイトカイニンがRNAの二次構造を直接変化させる、という可能性を想定し、RNAの二次構造を決定することが可能なDMS-seq解析を行い、サイトカイニン処理によって高次構造が変化するmRNA種の抽出を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画に照らして実験を進めていたが、調査実験の結果、DMS-seq解析に関しては予想よりも条件検討を慎重に行う必要があることが分かった。このため、初年度に一部開始する予定だったDMS-seq解析のスケジュールを変更し、これにかかる消耗品や外注費について未使用となり次年度使用が生じた。これらの予算については、スケジュール変更はあるものの、当初計画通りDMS-seq解析のために今後使用する予定である。
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