2023 Fiscal Year Research-status Report
確率的手法に基づく身体図式変化に柔軟な身体内外知覚統合型ロボットシステムの研究
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23KJ0550
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 裕弥 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 身体構造推定 / 推定アルゴリズム / IMUセンサ / 確率分布 / ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度では,身体中に取り付けられた慣性計測装置(以下,IMUセンサ)からロボットの身体構造を推定する基礎技術を開発した.IMUセンサとは,加速度と角速度を計測可能な装置であるが,これらを複数身体に取り付けてロボットを動かすことで,各センサは角速度と共に遠心力を感じ,遠心力が加速度として観測される.観測された遠心力と角速度から,取り付けられたセンサの相対位置および相対姿勢を逆算できることに気づき,新しい身体構造推定手法を提案した. 当該年度ではまず,最も簡単な身体構成であるロボットマニピュレータを用いて実験した.IMUセンサを2つ搭載した接合モジュールを開発し,これらを変形しにくく剛体近似が可能なリンクに取り付けて簡単なマニピュレータを構成し,リンクの長さおよびモジュールの取り付け姿勢(以下,ロボットの幾何構造)を推定した.任意形状のリンクで効果があることを実証するために,自然物である木の棒を用いてマニピュレータを構成した.検証実験から,2つの木の棒から構成された6自由度マニピュレータで,目標位置へ手先を到達できることを確認した.この内容を論文にまとめ,国際学会へ投稿し,2024年4月現在査読中である. さらに,複数のIMUセンサから推定されたロボットの幾何構造の精度を評価するために,また他のセンサから得られた情報を統合できるようにするために,確率的に扱う手法を考案した.ロボットの幾何構造のうち姿勢に関わるものは,従来確率的に取り扱うことが困難であったが,「ビンガム分布」と呼ばれる確率分布を用いることでその問題を解決した.当該年度では,ビンガム分布を効果的に取り入れたロボットの幾何構造推定手法を提案し,統計学的に扱いやすい形にすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度での当初の研究計画では,ロボットの身体構造推定の補助のために,外部環境に固定されたカメラのような外部センサを積極的に利用した手法の解明を予定していた.しかし,当該年度の研究成果により,IMUセンサのような内部センサだけでも十分に高い推定精度を得られることが判明し,2024年度に予定されていた逐次的身体構造推定の手法の確立に大きく寄与した.さらに,より複雑な身体を有するロボットを取り扱うために,外部センサの積極的利用を予定しているが,その際に必要となる確率的手法の構成法についても大きな進捗が得られた.来年度の研究のための準備が完了したことに加え,当初の研究計画で予定されていたよりも理想的な手法を発見したという点で,現在の研究進捗状況は計画以上の進展があったと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度では,身体幾何構造の推定手法の応用性を確認するために,マニピュレータよりも多くの関節を有する二脚の人型ロボットなどを構成して検証を進める.2023年度までの研究成果によって,ロボットの幾何構造を推定するに足るセンサ構成法が明らかになったため,多種多様な身体を構成可能なリンク接合モジュールの構成法を洗練し,検証実験の効率を加速させる. また,外部センサから得られた情報を統合するために,統計学的手法に基づくインターフェイスの構成法を明らかにし,多種多様なセンサ情報を取り込めるフレームワークを実装する.これは,2023年度に明らかにした確率的身体構造表現に基づいて発展させ,より一般的な形へ理論的側面も含めて拡張する.この際に,統計的機械学習および異常検知の知見や,気象予報などで用いられるデータ同化手法の適用を検討する. さらに,研究室で保守・管理している既製のロボットに推定手法を適用し,道具利用等への手法の応用可能性を探る.提案手法はIMUセンサのみを用いているため,カメラを利用した場合と比較して扱うデータ量が格段に少なく省エネルギー化および小型化できる可能性があり,さらに視界不良等によって精度が悪化したり正常な推定が妨げられる現象も回避できる点で,実用的にも高い有用性を期待できる.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,予算の残額が5000円を下回り,ロボットモジュールに搭載する小型計算機の購入もできなくなったため,無理に帳尻を合わせて不必要かもしれない物品を購入するよりも,次年度の予算と組み合わせて確実に必要な物品を購入しようと考えたためである. 使用計画としては,現在開発中のロボットモジュールを量産する予定であるので,その必要部品の購入に充てようと考えている.
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