2023 Fiscal Year Research-status Report
伝導特性制御を目的とした新規オリゴマー型有機伝導体の合成とその物質設計指針の創出
Project/Area Number |
23KJ0577
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
小野塚 洸太 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 助教
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | オリゴマー / 分子性導体 / 有機伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
軽量、柔軟性を有する有機伝導体は、デバイスの小型化・軽量化という観点より近年注目される材料群である。有機伝導体材料の設計指針を立てる際、「構造-物性相関」に基づく伝導機構を把握することは重要である。しかしながら、現在広く普及している導電性高分子は、分子量分布を有する混合物であり、単結晶の形成が難しく、固体物理の理論に基づいたバンド構造が得られない。そのため、伝導機構の解明や機構に基づいた分子設計が困難である。本研究では、上記問題を解決するために、オリゴマーに着目し、新規オリゴマー型ドナー分子の設計、合成による新規有機伝導体の作製、物性測定、第一原理計算による伝導機構の解明を実施している。先行研究から、伝導度の向上には、鎖長伸長に伴う共役系拡大により、分子内での電子反発Uを軽減させることが有効であることが明らかとなっている。しかしながら、酸化に対する不安定性や溶解性の低さに起因して、結晶形成が期待できる長鎖オリゴマーの合成、単離は困難であった。初年度では、導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体からなる新規4量体オリゴマーを構成ユニット、配列を含めて設計し、動的なねじれ構造を導入、合成に成功した。加えて、合成した新規伝導体に関して、物性評価、第一原理計算を行った。その結果、先行研究で報告されている同一の対アニオンを有する2量体と比較して6桁の伝導度向上が確認され、単結晶性オリゴマー伝導体として最高値を更新した。加えて、高温領域では、金属的な伝導挙動が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で着目しているオリゴマーは、高い分子設計自由度(鎖長、末端基、構成ユニット)を有し、単結晶作製可能な分子量領域であることから、小分子系で培われた分子性導体分野の知見により、単結晶構造に基づく伝導機構の解明が可能である。以上理由から、魅力的な材料群であるが、導電性高分子材料と比較して、検討がほとんどされていない。本研究は、これまでに、オリゴマーならではの自由度であるユニットの種類および配列によって、結晶中における積層構造と電子機能を制御し、大幅な高伝導度化、金属化を実現できることを明らかにしている。本成果は、構造が明確で、分子設計自由度に優れたオリゴマー型有機伝導体の有用性を示すものであり、新たな伝導体材料の開発につながるものであると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、オリゴマーの高い分子設計自由度(鎖長、配列)を活用し、鎖長伸長に伴う共役系拡大により分子内での電子反発Uを軽減させことで大幅な伝導度の向上、金属化を実現してきた。最終年度は、この伝導体設計指針を推し進めることで、電子反発Uをさらに軽減させるとともに、大きな分子間相互作用に起因する大きなバンド幅Wを向上させることで、より一層の伝導度の向上を目指す。
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Research Products
(6 results)