2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ0642
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 経夫 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 初期宇宙 / 宇宙磁場 / 磁気流体力学 / 磁場生成 / Hosking積分 / アクシオンインフレーション / ハミルトニアンシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、初期宇宙の磁場の時間発展則を標準的な宇宙論のもとで解析的に記述する研究を概ね完成させた。磁気流体力学の保存量 Hosking integral を考慮し、磁場エネルギーを散逸する各種物理過程を体系的に分類して考慮することで、宇宙進化とともに磁場が複数のスケーリングレジームを経ながらエネルギーを失う過程を明らかにした。初期宇宙の物理をさぐるうえで、宇宙磁場を手がかりにした定量的議論を行うためには、磁場の時間発展を理解することが欠かせないため、本研究によって今後の議論の土台が整えられた。この成果を用いて、宇宙に遍在する磁場の起源を説明する有望なシナリオとして、初期宇宙のインフレーションと呼ばれる機構が宇宙進化の中で比較的遅い時期に磁場を生成する模型を提案した。とくにアクシオンと呼ばれるタイプの新粒子がインフレーションを引き起こし、かつ磁場を生成するような模型の特殊な場合である。さらに、将来的に宇宙磁場の問題への応用を目指して、宇宙の大規模構造の形成過程でニュートリノが果たす役割を大規模に解ける可能性のある量子計算アルゴリズムを提案した。Hamiltonian シミュレーションと呼ばれる量子計算手法によって、暗黒物質および物質が作る重力場中のニュートリノ分布関数の線形な時間発展を解くというものである。これは、宇宙磁場の問題がそうであるように、計算コストの観点で古典的な計算が難しいような場合にも、解析的な考察を補完する数値的アプローチとしての意義を持つ。また次年度に向けて、新物理としてアクシオン場を導入した場合の磁場との相互作用による新規現象の研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙の磁気流体の時間発展を解析的に考察するという、本研究の計画すべての基盤になる研究が概ね完成したことで、これ以降の進展の見通しが立ち、かつ応用面でもすでに成果があるため。一方で、磁気流体力学に新物理を取り入れた段階の成果はまだ出ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、初期宇宙の磁場の時間発展則を標準的な宇宙論のもとで解析的に記述する研究を早急に完成させる。そのうえで、新物理を取り入れた現象論を展開し、当初の目的を達成する。新物理としてとくにアクシオン場と宇宙の位相欠陥の導入による新規な現象を予想しており、重点的に取り組むことを計画している。
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Research Products
(5 results)