2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ0681
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 拓 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 視覚 / 時間 / 数 / ベイズ統計 / 情報統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、時間知覚と数知覚における相互作用の発生機序を説明する数理モデルの構築、および検証を目的とした。時間と数の相互作用について、ベイズ統計理論に基づいた数理モデル (以下、ベイズ推論モデル) に基づく予測をたて、それを行動実験によって検証した。実験では、新たに開発した、時間情報と数情報を抽象的な「量の情報」として統合する課題を用いた。実験参加者は、2つの視覚刺激の「量」を、時間、数、またはその両方に基づいて比較した。その結果、統合における各次元 (時間および数) の重みは各次元の相対的な信頼性に比例し、統合された推定値は時間または数単体の推定値よりも信頼性が高くなるという、ベイズ推論モデルの予測と整合的な結果が得られた。さらに、刺激の経時変化を操作することによって、時間と数の統合は、各情報が利用可能になるタイミングが近づくにつれて統計的最適に近づくことを明らかにした。これらの結果から、時間と数の知覚の相互作用は、過去に類似のベイズ推論モデルによって説明されてきた多感覚情報統合と同様の知覚メカニズムで生じることが示唆された。
さらに、ベイズ推論モデルの枠組みを応用し、時間知覚における加齢変化を検討する国際共同研究を行った。この研究から、時間知覚において二つに区分される時間長知覚と時間的予測の関係が、ベイズ推論モデルの枠組みで新たに説明できる可能性が示唆された。
以上の成果を国内外の3件の学会で発表し、国際学術誌に原著論文として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に2本の国際学術誌論文 (うち1本は国際共同研究) を発表した。以上の成果に基づいた脳機能計測研究も順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在進行中の脳機能計測実験を進めていくとともに、ベイズ推論モデルによって表現される情報処理過程がどのように脳活動に反映されているかを検証するための実験方法および解析方法を検討する。
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Causes of Carryover |
留学により謝金を支払う必要のある行動実験の大部分を他研究機関で行った都合で、当初予定していた人件費・謝金の支出の必要がなかったため。翌年度は脳機能計測実験に伴う機材使用料・謝金の支出に加え、円安に伴う国際学会出張費の増加から、今年度よりも多い支出額が予想されるため、繰越額を使用して当初の計画どおり研究を遂行する。
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