2023 Fiscal Year Research-status Report
処置を促す政策における限界介入効果を利用した政策割り当てルールの統計的決定
Project/Area Number |
23KJ0713
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津田 俊樹 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 計量経済学 / 内生性 / 識別 / 一様信頼帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、限界介入効果について、次の1、2、の二つの研究を行った。以上の研究を通じて限界介入効果の適用範囲を広げ、処置を促す政策における限界介入効果の利用を検討していきたい。 1、処置変数が多次元である際にある一定の処置選択モデルにおける限界介入効果の識別について研究した。処置変数が多次元である際の限界介入効果の識別について、先行研究では非常に抽象的な処置モデルのクラスを定義し、そのクラスの下での識別条件を導出していた。一方で、二値の場合に一般的に用いられるgeneralized Roy modelを多次元に拡張した処置モデルはそのクラスに含まれておらず、識別条件は確立されていなかった。この点について本研究では、generalized Roy modelを一般化した処置モデルに対して限界介入効果の識別が可能であることを示し、その識別条件を提示した。また、その結果導出される限界介入効果に関する経済学的な解釈についても議論した。 2、限界介入効果関数の一様信頼帯について研究した。限界介入効果関数の統計的な推測を行う場合において信頼帯の構成は必要不可欠である。既存の実証研究においては、各点における臨界値を用い標準誤差と推定値を基に信頼帯の構成を行なっていた。一方で限界介入効果の評価対象は関数であるため各点ではなく関数全体において不確実性の評価をする必要があり、現行の信頼帯の構成では誤った統計的推測につながる恐れがある。本研究では、限界介入効果関数に対する分布関数の近似を通して一様信頼帯を構成することに成功した。さらに提案手法ではブートストラップなどの数値計算を必要とせず解析的に一様信頼帯を構成することができるため、実証研究者にとって簡便な手法になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多次元の処置に対する限界介入効果の識別条件を確立し、限界介入効果の適用範囲を広げることに貢献できたと考えている。加えて統計的推測において必要不可欠な一様信頼帯の簡便な構成方法を提案できた。 1、の研究の成果について、国内学会である「2023年度関西計量経済学研究会」で口頭発表を行った。また``Treatment Effects with Multidimensional Unobserved Heterogeneity: Identification of the Marginal Treatment Effect”と題した1本の論文を執筆して国際学術誌に投稿した。 2、の研究の成果は、共同研究者である奥井亮教授により国内学会である「2023年度関西計量経済学研究会」で口頭発表された。また、2024年度ベトナムで開かれる「The 2024 Asia Meeting of the Econometric Society, East & Southeast Asia」にて発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で達成した限界介入効果に関する理論的結果を踏まえて、経験厚生を最大化する処置促進政策の分配ルールの研究に着手する。また、分配ルールの統計的な性質についても周辺分野の文献を読み最先端の理論的結果を理解するとともに、導出した分配ルールの分析に適用を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については、予定していた物品の早急な購入の必要性がなくなったためである。この差分は次年度に必要になった物品の購入に回す予定である。
翌年度は、今年度と同様に主に海外及び国内の出張に関わる費用、図書などの研究に必要な資料及び物品の購入などに関して科研費を利用する予定である。
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