2023 Fiscal Year Research-status Report
非ユニタリ演算に対する高階関数を実現する量子アルゴリズムの構築と数理構造の解明
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23KJ0734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 智治 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 高階量子演算 / アイソメトリ操作 / 誤り耐性量子計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 前年度の研究内容である決定論的かつ厳密なユニタリ反転アルゴリズムについての論文のアップデートおよび出版作業を行い、Physical Review Letters誌より出版された。 2. ユニタリ反転アルゴリズムは量子系の可逆な時間発展を表すユニタリ操作がブラックボックスとして与えられた時に逆操作を出力する高階量子アルゴリズムであり、「時間反転」のシミュレーションに対応する。ユニタリ反転アルゴリズムを量子情報の符号化を表すアイソメトリ操作の場合について拡張する系統的な方法を導出し、アイソメトリ共役化と呼ばれるタスクを実現するプロトコルを提案した。また、この方法が近似精度の意味で最適であることを導出するとともに、最適な近似精度を数値的に求める方法を考案した。本研究内容について論文にまとめ、arXivにプレプリントを投稿した(arXiv:2401.10137)。 3. 大規模な量子計算をノイズのある現実の系で実行するためには誤り耐性量子計算と呼ばれるプロトコルを実行することが必要不可欠である。一方で、従来の誤り耐性量子計算の方法は必要な量子ビット数が非常に大きく、この空間オーバーヘッドが誤り耐性量子計算を実現する際の大きな障壁となっている。本研究では[H. Yamasaki and M, Koashi, Nat. Phys. 20, 247-253 (2024)]で提案された定数空間オーバーヘッドプロトコルを最適化することにより、閾値を高く保ったまま表面符号などの従来手法に比べて空間オーバーヘッドを大幅に削減するプロトコルを提案した。本研究については論文にまとめ、arXivにプレプリントを投稿した(arXiv:2402.09606)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では高階量子アルゴリズムの研究としてアイソメトリ操作の逆変換化や共役化のアルゴリズム開発を1年目の研究目標に据えていたが、その目標を達成し研究内容をarXivにプレプリントとして発表した(arXiv:2401.10137)。当初の計画にはなかった誤り耐性量子計算についての研究も開始し、こちらについても量子ビット数を大幅に削減するプロトコルの提案と数値シミュレーションについての論文をarXivにプレプリントとして発表した(arXiv:2402.09606)。現在、高階量子アルゴリズムの研究で培った解析手法を用いて、port-based teleportationと呼ばれるテレポーテーション手法や量子スイッチと呼ばれる通常の量子回路では実現できない特殊な因果構造についての数理構造の研究をフランス、スイス、ポーランド、オランダ、カナダなど様々な国の研究者と共同研究として推進しており、いくつかのプロジェクトについては現在論文執筆中である。このように、当初の研究計画から派生した多くのプロジェクトや完全に新しい分野についての研究が実施できており、研究成果を論文としてアウトプットできているため現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 高階量子アルゴリズムに関連した研究としてport-based teleportationや量子スイッチの数理構造についての研究を現在実施しており、これらの研究成果を論文としてまとめる予定である。また、通常の高階量子アルゴリズムにおいては入力の量子操作についての情報が全くない状況を考えることが多いが、実際には入力の量子操作についての構造が部分的に分かっている状況が多い。例えば、計算量理論などの文脈でよく考えられるオラクルと呼ばれる問題の入力の情報を持ったユニタリ操作は計算基底について対角化されているなどいくつかの構造を保持している。入力の量子操作について部分的に分かっている構造を用いることで高階量子アルゴリズムの性能を向上させることが可能であるか、その限界はどのようなものであるか、などについて半正定値計画法や群論的手法などの数理手法を用いて研究を行っていく予定である。 2. 誤り耐性量子計算についての研究で、スタビライザーシミュレーションを用いた数値シミュレーションやコーディングの技術を培った。今後もこの技術を用いて主に数値的な手法から誤り耐性量子計算の最適化などについて研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の出張に際し、滞在先の研究機関などから当初の予想を超える旅費補助を受けたことや、今年度出版した論文の掲載費用について指導教員の研究費から負担いただいたことで支出が当初の計画よりも少ない金額となった。一方で、滞在先の機関などからの旅費補助がなければ今年度の支出は当初の計画よりも多くなっていることから、次年度使用額を利用することが必要であると考える。 次年度は将来のポスドク先を探すために様々な国で研究室滞在を行なっていくことが重要であると考えている。そのため、次年度使用額を利用して長期の研究室滞在やワークショップ参加を行なったり、学会発表のための出張などを行なっていく予定である。
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Research Products
(9 results)