2023 Fiscal Year Research-status Report
固体高分子形燃料電池の電極構造と運転条件の一貫設計のための等価回路モデリング
Project/Area Number |
23KJ0743
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 暉久 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 等価回路モデリング / 固体高分子形燃料電池 / 電極構造 / 運転条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
燃料電池は化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するデバイスであり、固体高分子形燃料電池は低温作動および素早い始動・停止を特徴としとりわけモバイルのアプリケーションに適している。固体高分子形燃料電池における効率低下のメカニズムを理解することにおいて、等価回路モデルは有効的である。ここで、モデルの各要素は電気化学反応・輸送現象に即して計算される必要がある。はじめに従来の1次元の伝送線モデルをベースとして、新たに3次元の伝送線モデルを構築した。ナノスケールの不均質な多孔質構造に基づいて、電気化学反応・輸送現象の各プロセスの局所抵抗を計算することのできるソフトウェアを開発した。また、プロセスごとに特有の時定数情報に基づいて、これまで単一のものとして扱っていた抵抗成分を、ガス拡散、酸素還元反応、Pt酸化といったプロセスごとに分離するようにモデルを拡張した。さらに、生成物である水の輸送にも着目して、インピーダンスへの寄与のモデリングを進めている。 2023年度はベースとなるソフトウェアの開発に取り組み、そこから得られた成果を国際学会(口頭発表、2件)および国内学会(口頭発表、1件)にて筆頭著者として発表した。さらに、PEMFCのカソードにおけるロスメカニズムをシミュレーションおよび実験から定性的・定量的に研究した。この成果をまとめ、筆頭著者としてジャーナル(International Journal of Hydrogen Energy)に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は当初の研究計画の通り、従来の1次元の伝送線モデルから3次元の伝送線モデルに拡張した。具体的には、2022年度までのプロトン・電子の輸送および酸素還元反応に加えてガス拡散、酸素還元反応、Pt酸化といったプロセスをモデルに導入した。生成物である水の輸送のプロセスについては、現在モデリングを進めているところである。全体として、おおむね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初めに生成物である水輸送のモデリングを行う。実験で同定が必要なパラメータについては、評価装置を改良しつつ実験を行い定量化する。また、測定されるインピーダンスとシミュレーションの結果を比較して、モデルに足りない要素(プロセス)を明らかにし、新たに導入していく。
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Causes of Carryover |
電極作製の装置をスプレー塗布からブレードコートに変更した。それに伴い、スプレー塗布装置および伴う備品の購入の必要がなくなった。また、国際学会の参加費を特別研究員奨励費から支出する必要が無くなった。これらの理由で次年度使用額が生じた。この持ち越し額は、新しい評価装置の温度制御機構へ充てることを予定している。
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