2023 Fiscal Year Research-status Report
リミットサイクルを含む双安定な力学系のアトラクター間転移手法の開発
Project/Area Number |
23KJ0756
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 祐介 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | リミットサイクル / 力学的な振動子 / メトロノーム / 双安定系 / 同期現象 / 周期外力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,安定なリミットサイクルと安定固定点の両方を持ち,振動状態から静止状態への状態転移(振動停止現象)が実験的に観察される具体的な例として,可動な台の上に乗ったメトロノームを題材とした解析を行った.振動停止現象の解析を容易にするため,先行研究とは異なるメトロノームの数理モデルを新規に構築し,得られた運動方程式を平均化法によって近似することで,解析を行った.その結果,振動停止現象がリミットサイクルのサドルノード分岐によって起こることが明らかになった.さらに,2つのメトロノームを台の上に乗せた結合系についても同様の解析を行い,同相同期解,逆相同期解,振動停止解それぞれの安定性に関する相図を解析的に導出し,数値計算を追加で行うことで,平均化近似の妥当性を検証した.また,同相同期解が不安定化する際の分岐についても数値的に検証し,分岐図を作成した.以上より,台を介したフィードバックが,振動停止現象を引き起こしていることを明らかにした.これらの研究成果は,特別研究員として採用される以前から行っていた研究をさらに継続・発展することで得られたものであり,国際学術誌に掲載された. その他に,修士課程から継続していた研究に関して,非線形力学系モデルにおける発散解の安定性を解析した研究が国際学術誌に掲載された.こちらに関しては,振動現象に着目して解析を行ったという点で,本研究課題とも関連した研究といえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は,研究計画書にも記載した,メトロノームにおける状態転移を扱った研究を行った.モデルの構築から解析,数値計算,相図と分岐図の作成,といった,一連の結果を出すことができており,さらに成果が国際学術誌に掲載されている.以上のことから,本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,双安定なStuart-Landau振動子に対し周期外力を入れた場合の解析を行う予定である.さらに,時間遅れフィードバックを入れた場合についても,数値計算や解析を行い,異なる摂動を入れた場合の振動子の状態転移に関して,転移の起こりやすさ等の観点から比較を行う.
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Causes of Carryover |
当初より複数の学会への参加を予定していたが,国際学会が近隣(東京)で開かれるなど,旅費等に必要な金額が予想より少なく,次年度使用額が発生する事となった.2024年度は,この費用も合わせて使用することで,海外の学会等へ参加することを予定している.
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