2023 Fiscal Year Research-status Report
酵母デュアルスクリーニング系を利用した植物ウイルス抵抗性遺伝子のデザイニング
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23KJ0759
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 誠人 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | ウイルス抵抗性 / 宿主因子 / 品種改良 / ランダムスクリーニング / 酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業現場で利用されるウイルス抵抗性品種の多くは、ウイルスの感染に必須な宿主植物タンパク質(宿主因子)にアミノ酸変異を有することが知られる。これらの変異は、①植物の正常な生育に必要な宿主因子本来の機能は維持したまま、②ウイルスタンパク質との結合性低下等によりウイルス抵抗性を発揮する変異(以下、機能型抵抗性変異)であることが示唆されている。従来、機能型抵抗性変異は、抵抗性品種の原因遺伝子をマッピングすることで発見されてきたが、本研究では機能型抵抗性変異の新規創出を目指す。令和5年度は以下の2点を実施した。 1. 酵母デュアルスクリーニング系の構築 条件①②を満たす変異を酵母内で効率的に選抜する新手法「酵母デュアルスクリーニング系」を構築した。系の構築には、機能型抵抗性変異が既知の宿主因子eIF4Eとウイルスタンパク質をモデルに用いた。まず、酵母におけるeIF4Eの機能性試験により条件①の選抜が、酵母ツーハイブリッド法を用いたウイルスタンパク質との結合性試験により条件②の選抜がそれぞれ可能であることを確認した。次に、様々な実験系の検討を通じて上記2種の選抜を融合させた。最後に、本選抜系では野生型のeIF4Eを形質転換した酵母は生存しない一方、機能型抵抗性変異を有するeIF4Eを形質転換した酵母は生存することを確認した。以上より、機能型抵抗性変異を効率的に選抜可能な酵母デュアルスクリーニング系の確立に成功したと考えている。 2. EXA1の4EBM変異体のウイルス抵抗性評価 宿主因子EXA1は、機能欠損変異の導入によりウイルス抵抗性を付与できるが、同時に植物の生育が阻害される点が育種利用上の課題である。そこでEXA1が、主要な宿主因子である翻訳開始因子との相互作用モチーフ4EBMを有することに着目した。EXA1の4EBMにアミノ酸変異を導入したところウイルス抵抗性が発揮され、本変異は条件②を満たすことが示された。本成果は国際学術誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵母デュアルスクリーニング系の確立に成功したこと、およびEXA1の4EBM変異体がウイルス抵抗性を有することを解明して論文化したことから、研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、人工的にランダム変異を導入したeIF4Eライブラリーに対して酵母デュアルスクリーニング系による選抜を行うことで、機能型抵抗性変異の新規創出を目指す。また、EXA1の4EBM変異体に関して、植物の生育試験や遺伝子発現量解析を通じて条件①を満たすかを調べることで、ウイルス抵抗性品種の育成に向けた実用性を検証する。
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Causes of Carryover |
酵母ゲノムの改変により期待通りの表現型を示す菌株の作出に成功したため市販の酵母菌株の購入が不要となったこと、および酵母デュアルスクリーニング系の選抜条件の検討を通じて当初使用予定であった選抜用試薬が不要であると判明したことから、物品購入費が削減できた。次年度使用額は、ランダム変異ライブラリーに対する酵母デュアルスクリーニングにより得られたクローンのシーケンス解析や、植物体の生育試験に適するグロースチャンバーの購入等に充当予定である。
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