2023 Fiscal Year Research-status Report
言語創発のシミュレーションにおいて文法構造が生じる条件の解明
Project/Area Number |
23KJ0768
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 亮 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 言語創発 / 創発コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
5月に国際会議International Conference on Learning Representation (ICLR2023)に参加し、前年度に採択された筆頭論文のポスター発表を行った。6月には人工知能学会(JSAI2023)に参加し、オーガナイズドセッション「言語とコミュニケーションの創発~記号創発システムから共創的言語進化まで~」を企画して、当該セッションにて座長を務めるとともに、口頭発表を行った。10月には、国内ジャーナルである認知科学の特集「ことばの認知科学:言語の基盤とは何か」に筆頭論文が受理された。これは、言語とコミュニケーションの創発に対して構成論的なアプローチをとる日本の研究者を集め、共同で執筆した展望論文である。1月には、ICLR2024に別の筆頭論文が受理された(ポスター発表は次年度に行う予定である)。これは、ICLR2023に受理された論文の続きとなる言語創発に関する論文であり、当該年度の研究を代表するものであるといえる。3月には、言語処理学会(NLP2024)に参加し、テーマセッション「言語とコミュニケーションの創発」を企画して、当該セッションの座長を務めるとともに、口頭発表を行った。また、NLP2024では優秀賞1件、委員特別賞2件を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、創発言語に有意味な単語分割が生じる条件を模索する研究を中心に進めた。これは当初の研究計画で掲げた「創発言語に文法構造が生じる条件の解明」とはやや異なるものの、当初の研究計画で述べた「言語の二重分節構造」の観点から深く関連した重要な研究課題である。当該分野の最近の動向や、国際学会に投稿した論文に対する査読コメントなどを踏まえ、柔軟に方針を立てなおした結果、文法構造から単語分割に着眼点を移す判断を下すこととなった。結果として、査読付き国際学会であるICLR2023, 2024に主著が採択され、かねてよりの目標であったトップ会議への採択実績を得ることができた。また、研究計画当初には予期していなかったものの、学会参加などを通して国内の関連分野の研究者との繋がりが増え、オーガナイズドセッション(JSAI2023)やテーマセッション(NLP2024)を開催することもできた。また、これにより言語創発とその関連分野を巻き込んだ国内コミュニティが形成されつつある。以上のような状況を踏まえ、おおむね順調に進展しているという自己評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ICLR2024に採択された論文の続きとなる研究を進め、早ければNeurIPS2024もしくはICLR2025の採択を目指して執筆を進める。また、これまでは、機械学習分野におけるConference至上主義に従い、査読付き国際学会への投稿を中心に行ってきたが、己の更なる成長を促すために、ジャーナルへの投稿も検討していく予定である。また、言語創発とその関連分野を巻き込んだ国内コミュニティ形成をさらに進めるべく、オーガナイズドセッションやテーマセッションの追加開催を検討し、勉強会なども企画する予定である。
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Causes of Carryover |
国内外の出張に関してはおおむね計画当初の通り遂行したが、他の予算で十分充足が可能であったため、旅費に関して多くの次年度使用額が生じた。次年度も引き続き学会参加のための国内外の出張を行うほか、博士課程1年次の間に予期せず生まれた国内研究者たちとの交流を背景として、さらなる出張や勉強会を開催することを検討している。また、円安や物価高の進行の影響もある。そのため、次年度使用額の分も含めて、旅費を十分に使用できる見込みがある。また、物品費等に関しても次年度使用額が生じてしまっているが、これは設備の買い替え等が当初の計画よりも遅れているためである。次年度において買い替えを進めるので、これらに関しても十分に次年度使用額分を使える見込みがある。
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