2023 Fiscal Year Research-status Report
侵略的外来種の個性と繁殖行動を利用した誘引トラップの開発
Project/Area Number |
23KJ0874
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
酒井 理 東京農工大学, 大学院農学研究院, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Keywords | 外来種防除 / グリーンアノール / 小笠原諸島 / 個性 / ロボット / トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、外来種であるグリーアノールの繁殖行動を利用した誘引トラップを確立する。具体的には、対象動物の視覚ディスプレイを模倣したロボットの作成、ロボットに接近したトカゲの自動捕獲機構の開発、トラップへの誘引効果と対象個体の大胆さの関係性を検証する。1年目ではプロジェクトの下地を整えるために、(1)父島での調査環境の確立、(2)野外観察による基礎知見の収集、(3)トカゲ型ロボットの開発への着手を行なった。
具体的には、5月から6月にこれまでグリーアノールの研究に従事してきた研究者や防除事業の担当者とも交流を深め、移入個体群の分布拡大に関する現状を把握した。そして、東京都立大学の客員研究員の資格を得て、父島のフィールドステーションを利用する手はずを整えた。7月と9月に2週間ずつの現地調査から、繁殖期後の9月には視覚ディスプレイの発生頻度が激減すること、個体レベルではディスプレイを披露する間隔はランダムであることが明らかとなった。これらの知見はロボットによる動きの模倣に活かされている。更に、東京都立大学の研究グループと100個体以上の画像データを共有する連携体制を整え、現在はグリーアノールの体色の解析をおこなっている。得られる知見は、ロボットの外装の色味を忠実に再現する際に役立つことが期待される。 8月から東京農工大学の学生団体にロボットの開発協力を依頼した。開発担当者との綿密な話し合いと試行錯誤を重ね、翌年1月に試作機が完成した。また、外装部分の作成にも取り組んできた。実際のトカゲの液浸標本から粘土型を作り、その鋳型にシリコンを流し込んで固めることでリアルな造形を実現した。現在は追加で3機のロボットを作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の主な目的は計画通りに達成できたと自負している。特に、父島での調査環境の確立と野外観察に基づく基礎知見の収集に関しては期待以上の成果が得られた。東京都立大学の研究施設を利用させて頂くことで、長期滞在を必要とする現地での実験が行いやすくなり、円滑に研究計画を進めていく基盤が整えられた。トカゲ型ロボットの開発も計画通りに進み、2年目の野外調査の時期までに実用的なものが完成した。ロボットの開発において協力してくれた学生団体とも良好な関係を築き、今後改良や修理が必要な際にも直ぐに取り掛かれる技術的なサポート環境を構築した。また、グリーンアノールに対する忌避音声の開発の研究成果を学術論文として発表し、動物の性格に関わる総説論文を発表した。これらの状況を踏まえて「おおむね順調に進展している」という自己評価を選択した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の2年目は誘因性の実地試験が主な目標である。この達成に向けて、2024年の5月と7月にそれぞれ1ヵ月間の現地調査を計画しており、ロボットの提示実験の準備を進めている。また、9月にはロボットの改良のアイデアを議論するため共同研究者の元を訪れる。New South Wales大学にはロボットを用いたトカゲの進化の研究を展開する第一人者がおり、効果的な動きと色彩の改善に関して議論を交わす予定で日程調整を進めている。秋から冬にかけては捕獲機構の開発にも着手する。1年目に開発したロボットと併用し、野外に長期間設置しても耐えうる耐久性の実現に向けて、工学を専門とする研究者との情報交換を計画している。
|
Causes of Carryover |
2023年度にオーストラリアの共同研究者の元を訪問して、アノールロボットに関して意見を頂く予定であった。しかし、こちらと先方の日程が合わないため、2024年度の秋に訪問することとなった。そのため、オーストラリア出張に計上していた約30万円は繰り越して、2年目に使用する予定である。また、ロボットの外装部は専門家に外注するつもりであったが、自前で賄うことで開発費がやや安く済んだ。しかし、より精巧な外装を作成して誘引効果を上げるためには専門家への外注が必要であると痛感した。そこで、2年目には爬虫類の造詣に詳しい方へと外装の作成を依頼し、約15万円を使用する予定である。
|