2023 Fiscal Year Annual Research Report
極短パルスレーザーを用いたコヒーレント振動励起による異性化制御
Project/Area Number |
23KJ0901
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 誠 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | コヒーレント制御 / 振動量子波束 / 大振幅振動 / 異性化反応 / 分子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子スケールで化学反応を制御することは物理化学の究極の目標の1つである。中でも電子基底状態における異性化は、生体分子に代表される機能性分子が機能を発現する駆動力になりうるため非常に興味深い。そこで本研究では、極短パルスレーザーを用いた振動波束干渉によって、電子基底状態における異性化を実現することを目的とした。 本研究室におけるこれまでの研究で、超短パルスを複数回照射することで電子基底状態における振動波束干渉を引きこす場合、分子配向変化の影響により振動波束干渉が弱められることを明らかにしてきた。この減衰は、波束制御や振動分光の観点から望ましくない。本研究では、2-フルオロビフェニル分子におけるねじれ振動に着目し、分子配向変化により減衰されたねじれ振動波束干渉を回復させることを実験・計算の両面から試みた。 振動励起を引き起こす超短パルスを照射する前に、非断熱整列を引き起こす超短パルスを照射し、振動励起の瞬間における分子配向を制御することで、回転によって減衰される振動波束干渉が回復できると着想した。 まずは、本研究室で開発した回転を古典的に取り扱いつつ、振動を量子力学的に取り扱う振動波束計算プログラムを改良した。それを用いて、非断熱整列を引き起こすパルスと、それに続く振動励起を引き起こすパルスの組を2組分子に照射した場合に、振動波束干渉が回復することを理論的に明らかにした。次に、4発の超短パルスを生成する光学系を開発し、非断熱整列と振動波束干渉を組み合わせた制御を行うことで、実験的にも振動波束干渉を回復させることに成功した。 分子回転に阻害されずに効率的な振動波束干渉を引き起こす手法を確立した本研究は、振動波束干渉による電子基底状態における異性化の実現に大きく役立つと期待される。
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