2023 Fiscal Year Research-status Report
ブロック共重合体を用いた加熱・冷却プロセスのみでのシングルジャイロイド構造の作製
Project/Area Number |
23KJ0918
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮森 雄大 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | ブロック共重合体 / ミクロ相分離構造 / ジャイロイド構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
シングルジャイロイド(SG)構造は、キラリティを有し、フォトニックバンドギャップが大きいなどの理由から新奇な光学材料の候補として注目されている。本研究ではポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)からなるトリブロック共重合体を用いて、PSとPMMAの反発力(χ)の低さを利用した新規な手法のSG構造の作製を目的としている。 しかし、PSとPMMAのFlory-Huggins 相互作用パラメーターχの温度依存性の低さから当初の手法でのSG構造の作製は困難であったため、ポリ(メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル)(PTFEMA)、PS、P4VPを用いたPTFEMA-b-PS-b-P4Vを利用したSG構造の作製を試みた。具体的にはPTFEMA、P4VPにそれぞれSGネットワークを形成させたダブルジャイロイド構造に対して、あらかじめレゾールをP4VPネットワークに相溶させておくことで、P4VPのSGネットワークを架橋、炭素化を行うことSG炭素ネットワークのみが保持されたSG構造を作製する。 今年度は、幅広い組成範囲におけるPTFEMA-b-PS-b-P4VPトリブロック共重合体を合成、それらを複数の成膜条件で作製した試料のミクロ相分離構造を解析した。その結果、所望のPTFEMA、P4VPがそれぞれSGネットワーク構造を形成するダブルジャイロイド構造の組成領域、およびその組成領域が溶媒としてクロロホルムを用いることで拡大すること、N,N-ジメチルホルムアミドを用いるとポリスチレンが高体積分率な領域へシフトすることを明らかにした。さらに、上記のトリブロック共重合体の成分の順番を入れ替えたPTFEMA-b-P4VP-b-PSも合成し、ミクロ相分離構造と成膜条件の影響を調査した。得られた結果について、学術論文を2報執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していた作製方法では、PSとPMMAのFlory-Huggins 相互作用パラメーターχの温度依存性が低いためにシングルジャイロイド(SG)構造の作製が困難であることが発覚し、異なる方法でのSG構造の作製に切り替えた。 そこで、代替案である新奇な分子設計のポリ(メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエ チル)(PTFEMA)-b-ポリスチレン(PS)-b-ポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)からなるトリブロック共重合体を用いてのSG構造の作製の検討を開始した。広い組成範囲で40種類以上のPTFEMA-b-PS-b-P4VPを合成し、複数の成膜条件を検討することで現在目的としているPTFEMA、P4VPがそれぞれSG構造となるダブルジャイロイド構造の組成領域を明らかにした。しかし、レゾールとPTFEMA-b-PS-b-P4VPのブレンド試料でのダブルジャイロイド構造の作製や炭素化後にSG構造を保持させる条件の確立などいまだ課題は残っており、それらの検討が必要である。具体的な検討項目は、レゾールの添加量や異なる組成のPTFEMA-b-PS-b-P4VPの合成、炭素化の際の加熱条件、用いる架橋剤の種類など少なくない。 また、本研究を展開していくにあたって、成分の順番を入れ替えたPTFEMA-b-P4VP-b-PSの合成および複数の条件で成膜した試料のミクロ相分離構造の解析を行った。その結果N,N-ジメチルホルムアミドを用いることでコアシェルジャイロド構造という機能性材料の鋳型として有用な構造を効果的に作製できることが分かった。 しかし、本研究の主題であるSG構造の作製には課題点を多く残すため「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験において、ポリ(メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル)(PTFEMA)-b-ポリスチレン(PS)-b-ポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)を広い組成範囲で複数合成することで、PTFEMAおよびP4VPがそれぞれシングルジャイロイド(SG)構造となるダブルジャイロイド構造の組成領域を明らかにした。今後はその組成領域を参考に、架橋剤を添加した試料で同様の構造を作製し、炭素化を行うことでSG構造の作製を行う。しかし、炭素材料の作製において、炭素化の際の熱処理における構造の変形などに課題が残っている。そのため、熱処理条件(熱処理温度、昇温速度など)の検討や、架橋剤とポリマーのブレンド比、架橋剤の種類などの検討を行う。 また、順番を入れ替えたPTFEMA-b-P4VP-b-PSではコアシェルダブルジャイロイド構造などPTFEMA-b-PS-b-P4VPでは得られていなかった多様な構造が得られている。これらに関しても同様な手法で炭素化を行い、それらの構造観察および細孔径分布特性、比表面積などの構造的性質を測定し、分離膜や電気化学反応の触媒として期待できる高性能な炭素材料の作製を試みる。 これらと並行して、当初の計画にあったPS、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、P4VPからなるトリブロック共重合体を用いて、PSとPMMAの反発力の低さを利用したSG構造の作製も継続して試みる。
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Remarks |
第72回高分子学会優秀ポスター賞 2023 The 12th Taiwan-Japan Bilateral Polymer Symposium Poster Silver Award
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