2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ0951
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
待井 長敏 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | シクリッド / ECM / Wnt / マルチオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平行進化のモデルとして知られる東アフリカ三大湖のシクリッドを用いて、唇肥大化の分子進化メカニズムを解明することを目的としている。シクリッドの口腔形態は食性と強く関連していることで知られており、特に肥大化した唇は東アフリカ三大湖のそれぞれの湖で独立して獲得されたことから、平行進化および適応進化の好例として知られている。一方で、その進化プロセスを知る上で重要な唇肥大化の分子メカニズムは未解明であった。本研究ではシクリッドの唇肥大化において、プロテオグリカンリッチの特殊な皮膚環境が重要であることを見い出した。通常種と肥大種の唇の組織構造を比較した結果、プロテオグリカンを染色するAB染色ポジティブな真皮層が肥大化しており、プロテオームを用いた肥大種と通常種の比較の結果、肥大化した真皮の主成分はバーシカンやペリオスチンを含むプロテオグリカン関連タンパク質である可能性が強く示唆された。さらに三大湖のそれぞれのRNAseqをもちいたトランスクリプトーム比較では、細胞外マトリックス関連遺伝子が肥大化した唇を特徴づけることが明らかとなった。これらの過剰なプロテオグリカンの蓄積を引き起こすパスウェイの同定のため、幼魚期および成魚期のトランスクリプトーム比較解析を行った。バーシカンやペリオスチンの発現は成魚期だけではなく、幼魚期でも同様に発現が上昇しており、幼魚期および成魚期にエンリッチするパスウェイとしてWntパスウェイが見つかった。Wntパスウェイに関連する遺伝子は通常種と比較して、肥大種で活性化しており、いくつかの重要な遺伝子について、発現上昇が確認された。また、Wntパスウェイの活性化は三大湖の中でも少なくともヴィクトリア湖およびマラウィ湖で共通していた。現在これらの内容をまとめた論文を投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した項目は大別して、①組織構造比較、②発現局在解析、③プロテオミクス解析、④コンドロイチナーゼを用いた実証実験の4つである。①、③、④については解析が終了し、②については①、③、④の結果が良好であり、仮説の検証において十分であると判断できたため、実施しないこととした。これにより当初の計画は概ね遂行された。今後は成魚の比較で明らかになったことを元に、唇が形成される発生初期段階に焦点を当て、より詳細な解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
唇肥大種と通常種の網羅的な比較により、系統独立的に獲得された肥大化した唇はいずれもプロテオグリカンの豊富に含まれる真皮層の肥厚に起因することが明らかになった。また成魚と稚魚の比較により、その肥厚をもたらすパスウェイとしてwntパスウェイが候補に上がった。今後はより発生の初期段階に焦点を当て、細胞外マトリックス関連遺伝子やwntパスウェイ関連遺伝子の発現を解析する。具体的には通常種と唇肥大種の発生段階を追って時系列のRNAseqを行うこと、それぞれの種の転換期に、候補遺伝子の発現局在をin situ hybridyzationや免疫染色によって確認することを検討している。
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Causes of Carryover |
そのほかの結果が良好であったため、発現局在を実施しなかった。その余剰分が繰越となった。繰越分については解析発生段階を追って行う時系列トランスクリプトーム解析および候補遺伝子の発現局在解析に用いる。
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Research Products
(3 results)