2023 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of Neurovascular Organoids in Microdevices
Project/Area Number |
23KJ0987
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
浅場 智貴 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 神経新生 / 血管新生 / 神経-血管相互作用 / ティッシュエンジニアリング / マイクロデバイス / オルガノイド / 3次元培養 / マイクロ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体脳の軸索束は神経と隣接する血管で構成されており、特に発生時の形態形成の際に相互に影響し合う。例えば、互いを足場とした細胞移動や軸索伸展の制御である。これまでに脳オルガノイドの形態や神経軸索を伸ばす方向を空間的に制御する手法が報告された。しかし、脳神経疾患の病態解明、再生医療や創薬の基盤技術となりうるためには、さらに生体に類似した軸索束構造の再現が求められる。そこで、本研究の提案書には、マイクロ流体デバイスを用いた組織工学的アプローチにより、胚発生時期の神経・血管の空間配置を再現することで、大脳オルガノイドや軸索束内部へ自発的に血管網を形成させる手法に取り組むことを記載した。当該年度では、1)マイクロ流体デバイスの最適化、および2)脳内動態を模倣したヒト大脳オルガノイドの構築に取り組んだ。1)については、中枢神経系における神経軸索の長さが数mm~1 cm、および毛細血管の直径が 10 μm以下であることも考慮し、フォトリソグラフィを用いて大脳オルガノイドと血管内皮細胞や周皮細胞をはじめとする血管系細胞の空間配置を制御できるマイクロ流体デバイスを開発した。2)については、作製したマイクロデバイスの微小流路の両端に2つのオルガノイドを配置すると、数週間かけて、それぞれから自発的に軸索が伸長することを確認した。さらに血管形成に必須な血管内皮細胞、周皮細胞を含むハイドロゲルをオルガノイド周囲に送液培養することでオルガノイド、軸索束組織の接続領域で血管新芽が生じる様子が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた1)マイクロ流体デバイスの最適化、および2)脳内動態を模倣したヒト大脳オルガノイドの構築という課題に対して、以下のようにそれぞれ着実に課題解決を進めることができている。1)マイクロ流体デバイスの最適化においては、中枢神経系における神経軸索の長さが数 mm~1 cm、および毛細血管の直径が 10 μm 以下であることも考慮し、脳オルガノイドと血管系細胞の空間配置を制御できるマイクロ流体デバイスの設計を行った。さらにフォトリソグラフィ用いて作製したデバイスの微小流路内で培養液を送液しながら細胞培養が可能であることも確認した。 2)脳内動態を模倣したヒト大脳オルガノイドの構築においては、まずヒトiPS細胞から血管内皮細胞、周皮細胞を誘導した。免疫染色により血管内皮細胞のマーカーであるCD31+細胞、PDGFRβ+が確認できた。細胞非次に接着プレートを用いてヒトiPS細胞からなる三次元の球状組織を作製し、神経分化を経て、大脳オルガノイドを誘導した。大脳のマーカーであるFOXG1+細胞がオルガノイド上皮全体に見られ、その周囲に神経細胞のマーカーであるTuj1+細胞の存在が確認できた。次に作製したマイクロデバイスの微小流路の両端に2つの大脳オルガノイドを配置すると、数週間かけて、それぞれから自発的に軸索が伸長することを確認した。さらに血管形成に必須な血管内皮細胞、周皮細胞を含むハイドロゲルをオルガノイド周囲に送液培養することでオルガノイド、軸索束組織の接続領域で血管新芽が生じる様子が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、2)脳内動態を模倣したヒト大脳オルガノイドの構築において、デバイス内で胚発生時の神経―血管相互作用を再現し安定的に組織内に血管網を導入できる条件を見出す。その後、ヒト大脳オルガノイドの体外評価モデルとしての機能を評価するために、被験物質を添加することで、オシレーション強度の変化や組織分析を指標とした薬効評価法の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
当初、令和5年度計画では、 iPS細胞から大脳オルガノイド、血管系細胞への分化評価をPCR、免疫蛍光染色、RNA-Seqの遺伝子発現解析で評価予定であった。しかし、RNA-Seqの遺伝子発現解析を行わずとも、PCRや免疫染色による分化評価を通して、血管系細胞マーカーであるCD31+細胞、PDGFRβ+細胞や、神経系細胞マーカーであるTuj1+細胞やFOXG1+細胞が確認できた。このことから十分な分化評価を得たと考えた。その代わり、次年度にかけては、血管網をもつ大脳オルガノイド作製法の確立のさらなる手がかりを得るため、マイクロ流体デバイスを用いた大脳オルガノイドに血管網を導入する際に生じる神経血管相互作用についてRNA-Seqを用いて分析する計画である。
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