2023 Fiscal Year Research-status Report
染色体構造依存的なdilncRNA代謝によるDSB修復経路選択機構の解明
Project/Area Number |
23KJ1036
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
東出 望花 福井大学, 学術研究院工学系部門, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | DSB修復 / クロマチン / 減数分裂 / lncRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
DSB修復経路の選択は、ヘテロクロマチンなど染色体の高次構造状態に影響されることが報告されている。近年、DSB部位ではmRNAの転写が抑制される一方で、切断点から両方向に Damage-induced lncRNA (dilncRNA)の転写が起こること、このdilncRNAの代謝がDSB修復経路選択に関係することが分かってきた。しかし、染色体構造の違いによるdilncRNAの代謝反応の変化とそれによるDSB修復経路選択への影響は明らかになっていない。本研究では、染色体構造のダイナミックな変化を同調的にモニタリング出来る、出芽酵母SK1株の減数分裂期を利用して、染色体構造状態ごとのDSB修復経路選択の変化とdilncRNA代謝の関係性を調べる。 研究代表者は、減数分裂期特異的なプログラムDSBが起こらないspo11-Y135F株において、外的なDSBをCRISPR/Cas9によって導入できる株を作製した。この株を用いて、Cas9によるDSB形成部位周辺のDSB修復経路因子、ヒストン凝集状態、dilncRNA代謝因子の蓄積を比較するため、本年度は(1)修復因子の検出方法の検討、(2)使用する減数分裂期停止株におけるクロマチン凝集状態の定量的な比較を行った。(1)について、HR経路因子であるRad51については、細胞学的、生化学的な検出方法が確立されているため、染色体凝集状態の異なる2種類の減数分裂進行停止株を用いて、DSB形成部位周辺のHR因子Rad51の蓄積をクロマチン免疫沈降法(ChIP法)により解析した。また、NHEJ因子であるYKu70の検出を試みたが困難であったため、YKu70にタグを付加した株の作製を行った。(2)については、減数分裂期の異なる時期の進行停止株におけるヒストンH3のChiP-seqを行うための条件検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
修復因子YKu70自体をターゲットとした抗体による検出が困難であること、実験に使用する株のBackgroundにおいてYKu70にタグを付加した株がなかったことから、YKu70にタグを挿入した株を新たに作製する必要があり、タグの選別やリンカーを挿入したタグのデザインを行い、細胞生物学的・生化学的に検出可能なレベルのタグ付きのYKu70の作製するのに予想以上に時間がかかり、さらに全ての実験株への掛け合わせを行ったため進行が遅れた。また、当初計画になかったヒストンH3のChIP-seqを計画に加えたことも予定より進行が遅れた理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したYKu70-3Flag株を用いて、染色体構造の違いによりDSB修復因子の結合率がどう変わるのかをChIP解析と間接蛍光抗体法によって進める。減数分裂の進行停止株において、実際の染色体凝集の程度を数値化するため、ヒストンH3のCHIP-seqを進める。また、DSB形成部位のdilncRNAの代謝を調べるために、dilncRNAの転写についてリアルタイムqPCR、メチル化修飾について抗メチル化RNA抗体を用いたRNA免疫沈降、DNA/RNAハイブリッド形成についてDNA/RNA免疫沈降を行い、定量的に解析を進める。これらの実験を行い、dilncRNAと染色体構造や修復経路との関係を調べる。
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