2023 Fiscal Year Research-status Report
次世代二次電池への応用を指向した新規立体π共役分子系の構築
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23KJ1057
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木下 直哉 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 分子性結晶 / 酸化還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、これまで未踏であった分子性ダイアモンド格子を持つ分子結晶の作製に取り組んだ。分子性ダイアモンド格子を実現するためには、ダイアモンド格子を構成するsp3炭素を正四面型の分子骨格に置き換える必要がある。先行研究として、C3対称性の有機配位子を用いた正四面型分子錯体の合成が報告されている。この錯体は高選択的に合成でき、高い構造安定性を持つ。また、錯体の中心から各分子平面に対する角度が、ダイアモンド格子を構成するsp3炭素の結合角に一致している。そのため、ダイアモンド格子の炭素原子をこの正四面体型錯体に置き換えることができれば、分子性のダイアモンド格子が実現する可能性がある。しかし、この分子錯体に用いられた有機配位子はπ共役平面が小さく、酸化還元能も比較的小さい。そのため、錯体分子間の相互作用が弱く、分子性ダイアモンド格子の実現には至っていない。そこで本研究では、既存の有機配位子よりも酸化還元活性かつπ共役平面の広い有機配位子を新たに設計した。新規配位子の合成はDMFを用いた脱水縮合反応によって行い、種々の反応条件および精製条件を検討することで51%の収率で得ることに成功した。サイクリックボルタンメトリーおよびDFT計算の結果から、新規配位子は既知配位子より高いアクセプター性を持つことが示唆された。得られた新規配位子を用いて正四面体型錯体の合成を検討したところ、1H NMRやFT-IRの結果から錯体の形成が示唆されたが、X線構造解析に適した質の良い結晶は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、酸化還元活性な分子骨格を導入した新規立体π共役分子を合成し、その分子性結晶の作製と電気化学機能の開拓を行う研究である。現在までに、標的分子の合成のために必要な設備や試薬、消耗品の整備など順調に進められた。新たに設計した標的分子の合成が順調に進行し、高い収率で得ることに成功している。得られた新規分子を用いた錯体の合成も概ね予想通りに進行したものの、その構造解析には至っていないため、今後は結晶作製ならびに新規誘導体の合成を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られた知見をもとに、新規正四面体型錯体の構造解析を進める。また、新規立体π共役分子の合成と電気化学機能の調査を進める。前年度までに見出した新規合成法の応用可能性を拡大するため、既存の立体π共役分子の高効率合成の条件を探索するとともに、新規有機材料の合成にも挑戦する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた合成実験において、予想以上に効率良く反応が進行したことから、必要となる薬品類の使用量を大幅に抑えることが出来た。当該実験にて得られた成果から、有機配位子の分子構造をより難溶性・π-π相互作用の強い誘導体に置き換えることで、より結晶性の良い分子結晶が得られる可能性が示唆された。そこで次年度では、当初予定していた実験計画に加えて、この新たな分子設計指針を取り入れた有機配位子の合成を行う。
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