2023 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算を用いた光環境が無機化合物結晶の機械的性質に与える影響の解明
Project/Area Number |
23KJ1059
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
星野 聖奈 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | 化合物半導体 / 転位 / 光塑性効果 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,主に以下2点の項目に取り組んだ. 【リン化ガリウムにおける転位コア構造の第一原理解析】III-V族化合物半導体リン化ガリウム(GaP)では光照射によって結晶の変形応力が低下する光塑性軟化現象が報告されている.本現象のメカニズム解明に向けて,当該年度はGaP中のすべり転位の転位コア構造を第一原理計算を用いて解析した.計算の結果,GaP中の転位コアは余分な同種間結合を転位コア中心に持つ構造(“再構成構造”)が基底状態において最安定となった.一方,光照射下のような過剰キャリアが存在する環境においては,転位コアがキャリアをトラップすることが分かった.またキャリアトラップに伴い,コア中心の同種間結合が解消され“未再構成構造”と呼ばれる構造へとコア構造が変化した.2つの構造について,転位の運動性を概算すると未再構成構造を持つ転位コアでは,再構成構造をもつそれと比較して運動障壁が半分以下の値となることが分かった.以上のことから,キャリアトラップに伴う転位コア構造の変化が,GaPにおける光塑性軟化に寄与していると考えられる. 【チタン酸ストロンチウムのすべり抵抗評価】ペロブスカイト構造を有する無機化合物半導体,チタン酸ストロンチウム(STO)を対象に第一原理計算を用いて転位のすべり抵抗を評価した.計算手法には一般化積層欠陥を用い,主すべり面である{011}面について結晶を理想せん断させた.計算の結果,STOでは{011}<1-10>が容易すべり系であることが確かめられた.加えて,このすべり系では完全転位が,バーガースベクトルが等価な2つの部分転位へと拡張することが示唆された.
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