2023 Fiscal Year Research-status Report
三酸素同位体異常を指標に用いた土壌に放出される一酸化二窒素の新しい成因解析法開発
Project/Area Number |
23KJ1088
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
DING Weitian 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 温室効果ガスN2O / 生成メカニズム / 三酸素同位体異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
硝化反応で生成したN2Oであれば、そのO原子は大気中の酸素分子(O2)を起源としているので、O2と同様の低いΔ17O値が期待される。一方、脱窒反応で生成したN2Oであれば、そのO原子は亜硝酸 (NO2-)を起源とすることから、NO2-と同様の高いΔ17O値が期待できる。N2OのΔ17Oを同時に測定することで、各反応から生成したN2Oの寄与率を正確に推定できる可能性が高い。 そこで本研究では、名大キャンパス内に観測定点を設置し、この土壌より放出されるN2OやCO2と、その直下の土壌を一年以上に渡ってサンプリングし、N2Oの放出フラックスとその安定同位体比 (δ15N, δ18O, Δ17O) や土壌中のNO2-の安定同位体比を分析した。 その結果、観測点におけるN2Oの放出フラックスは、3.8 ± 3.1 μg N m-2 h-1となり、先行研究で報告されているのと同様の放出量を示した。晴天時に放出されるN2OのΔ17O値は、平均-0.32 ± 0.09 ‰となり、O2と同様の低いΔ17O値を示した。このことから晴天時はN2Oの大部分が硝化によって生成していることが明らかになった。一方雨天時の放出フラックスは、38.8 ± 30.0 μg N m-2 h-1と有意に高くなり、Δ17O値も有意に高くなった(+0.12± 0.14 ‰)。このN2OのΔ17O値は、観測された土壌NO2-のΔ17O値(平均+0.23 ± 0.12 ‰)と近いため、降雨に伴って土壌N2Oの生成メカニズムが硝化主体から脱窒主体に移行し、また生成量が増加していることがわかった。降雨に伴って、土壌中が脱窒反応の進行に適した還元環境に変化した可能性が高い。N2OのΔ17Oは、土壌N2Oの起源推定に有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学振申請書に4つのステップで計画しました。それぞれ、(1)フロー式チャンバーの作成、(2)N2Oや土壌NO2-のサンプリング、(3)前処理、データ分析 と(4)D.データの解釈、論文化と関連調査を実施 です。現時点でステップ(1)から(3)が完成しました。(4)については、関連論文がunder reviewの状態になっています。
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Strategy for Future Research Activity |
今は、土壌N2OのΔ17Oの時間変化を調査してきました。今後は、土壌N2OのΔ17Oの空間変化を調査していく予定です。具体的には、森林土壌以外に、海洋、大気、河川などのN2Oを調査する予定です。
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Causes of Carryover |
論文を発表するために、英文校正の費用が必要です。そして、研究に必要な消耗品があります。例えば、土壌ガスを抽出するガラスシリンジや質量分析機を動かせるためのHeキャリアガスが必要。
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