2023 Fiscal Year Research-status Report
P-type conduction control by Mg ion implantation into GaN and demonstration of device operation
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23KJ1109
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 佑太 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | GaN / 選択的ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
[背景・目的] 電気自動車の普及などの電力需要の高まりから、超低オン抵抗・低リーク化といった高効率なパワーデバイスが求められている。GaNは高い絶縁破壊電界・キャリア移動度を有するためオン抵抗をシリコン (Si) の1000分の1まで理論的に低減できる。しかし、GaNにおいてはデバイス作製に必要な局所p型領域の形成が困難であり、これは一般的に用いられるMgイオン注入ではGaN結晶中に結晶欠陥が大量に形成されるためである。昨年度、我々はGaN中におけるMgの熱拡散現象に着目しており、熱拡散を用いることで高品質、低コストな局所p-GaNの作製が可能であることを発見した。今後はGaNパワーデバイスの普及に向けた本研究のプロセス技術の確立が急務である。 [昨年度の研究実施状況] 1. Mg熱拡散現象を用いた局所ドーピングに関する実験。これまで、GaNのおけるMgの拡散係数は非常に小さく、デバイスへの適用には難しい技術とされていた。しかし、最表面に高濃度のMg層(>0.2-5E19 /cm3)を形成し、それらを拡散源として熱拡散させればMg拡散係数は10E12 cm2/s台まで増加し、数百nmの拡散長を得ることができることを発見した。また、現在は熱処理温度を変えることで拡散距離を調整しているが、次年度はさらなる制御性向上のために拡散メカニズム解明に向けた実験及び理論計算も行う。 2. 拡散源の形成手法の検討。熱拡散における拡散源の形成手法として、我々は金属Mgアニーリング、Mgイオン注入、エピタキシャル成長の3つの手法を開発した。各手法それぞれにメリット、デメリットがあるが、これにより形成手法の選択肢を増やすことで様々な縦型デバイスの要求に合うプロセスを可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画以上に進展している。 研究計画における目標はMg高温イオン注入による高品質(補償率10%以下)な局所p-GaNの形成(目標1)とデバイス評価(目標2)であり、手法はやや異なるが当初の研究計画の目標1を達成した。Mg高温イオン注入はアニールを行いながらイオン注入するこで、注入時に形成された欠陥をより回復することができると期待されていたが、実際にはその後にさらに高いアニールでその差異はほとんど確認されなかった。また、保護膜の熱耐性や大量生産性に課題が残った。しかし、実験過程における欠陥評価で新たな発見があり、欠陥を上手く使い拡散を誘発させることでp型化に成功した。 目標2に関しては現在進行中である。目標1が当初より早く達成できたことに加えて、研究人数も増えグループとして活動できるようになり、実験スピードも加速している。これによりデバイス関係の知見や議論も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Mg熱拡散現象を利用した局所ドーピングの実験においては、拡散距離の制御性向上を目指すために、拡散メカニズムの解明を進める。これにより、デバイスの設計やプロセスの最適化が可能となる。次に、各拡散プロセス(形成手法に依存)の利点と欠点を総合的に評価し、様々な縦型デバイスの要件に対応できるようにする。例えば、表面平坦性が低くても問題のない周辺耐圧構造(JTE: junction termination expansion)などは金属Mg拡散法、MOSFETなどのp-well領域に用いる場合は表面平坦性の優れた浅いMgイオン注入-拡散法といったデバイス特性に合った形成手法を提案できるようにする。さらに、Mg高温イオン注入課題の欠陥評価によって得られた新たな発見を活かし、欠陥を活用して拡散を誘発させる手法に注力する。これにより、局所p-GaN深さ及び濃度の制御性の向上を目指し、デバイスの設計自由度が上げる。最後に、デバイス評価に関しては、研究人員の増加やグループとしての活動を通じて、実験のスピードを向上させながら、デバイス関連の知見や議論を積極的に行う。これにより、目標の達成を早く達成できるようにする。以上が、GaNパワーデバイスの普及に向けたプロセス技術の確立を進めるための推進方策である。
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Causes of Carryover |
次年度に本研究に関連した九州大学寒川研究室への3か月の長期出張に行く必要があり、その出張費用を科研費で補う。この共同研究は本研究の実験結果を理論計算で再現するために必要である。また、具体的な費用は滞在費(45万)、交通費(5万)、日当(約20万)であり、出張期間でおよそ70万と見込んでいる。次年度は国内学会2件の参加(1件当たり交通費4万円, 宿泊費5万円)予定があり、次年度予算の80万円では、70万円+18万円で8万円不足している。その不足分を今年度から繰り越す。
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