2023 Fiscal Year Research-status Report
The Institutional Studies of University Fiscal Autonomy in Germany
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23KJ1131
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横山 岳紀 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 学問の自由 / 大学の自治 / 大学財政 / 大学改革 / 大学法 / ガバナンス / ドイツ / ノルトライン・ヴェストファーレン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ドイツの大学財政制度を州ごとに規定する州大学法の立法過程の分析を行い、ドイツにおける大学の自治(Hochschulautonomie)概念が政党や大学構成員からいかに把握されているかを明らかにした。特に規模の大きいノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州を対象として、ドイツにおける近年の大学改革の端緒となったとされる1998年連邦高等教育大綱法成立以降の大学法の改正プロセスを財政と組織改革に焦点を当てて分析を行った。方法として、州議会会議録の分析による論点の析出、並びにNRW州議会や文部省における資料収集、デュイスブルク・エッセン大学の教員への聞き取り調査を行い、次の知見を得た。 NRW州においては、2000年の大学法改正以降、財政面においては交付金の一括交付や大学契約に基づく予算措置等の改革を行い、組織面においては公法上の社団として州からの独立を進める等の大規模な規制緩和政策を実施してきた。前者においては、大学関係者や野党から大学財政の窮状が改善されない一方、包括予算の実施等の新たな業務の増加に伴う財政支出が必要となることの矛盾が問題として指摘されており、後者においては1973年の大学判決を踏まえた大学の意思決定構造が法改正によって大幅に改変されてしまうことの法的な懸念が問題となった。とりわけ組織改革においては、大学評議会(Hochschulrat)という機関が新たに大学に設置されることで、これまで全構成員による意思決定機関として位置づけられてきた評議会(Senat)の役割が縮小され、大学評議会や学長に権限が集中する組織のあり方の問題性が集中的に議論されることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究成果を日本教育学会、日本教育行政学会、中部教育学会、大学評価学会の4つの学会で発表するとともに、ドイツにおける現地調査を実施し、行政機関における資料収集並びに研究機関における聞き取り調査を予定通り実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでNRW州の大学法の改正プロセスの分析を行って整理した大学改革の論点を踏まえ、それらの議論となった点が制度にどの程度組み入れられているかといった制度化のプロセスを把握する必要がある。また、NRW州で行った研究枠組みを援用して、規模の大きい他州の比較分析を進めていくことで、連邦制であるドイツの全体的な大学組織、財政制度の姿を明らかにしていく必要がある。したがって、今後は継続して国内における資料収集・分析を進めるとともに、現地における長期的な調査を進めていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
今年度はドイツにおける現地調査を約3週間実施したが、計画段階で物価高並びに円安の状況にあり、従来よりも経費が膨らむことが予想されたため前倒し請求を行った。しかし、可能な限り旅費を節減をしたことで、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、次年度請求分と合わせて現地調査の旅費として使用する予定である。
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