2023 Fiscal Year Research-status Report
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23KJ1155
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 幸夫 京都大学, iPS細胞研究所, 研究員
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | オルガノイド / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
間質性肺炎やウイルス性肺炎等の重篤な呼吸器疾患においては、肺胞の著しい機能低下が認められる。しかしながら、これらの呼吸器疾患の発症機序については、未解明の部分が多く残されている。ヒトiPS細胞等から分化誘導した肺胞オルガノイド等のヒト肺胞モデルは、これらの呼吸器疾患研究への応用が期待されているが、従来の分化誘導技術によって作製された肺胞オルガノイドは、機能的に未熟であり、ガス交換能を 評価することは困難であった。本研究では、臓器チップ技術を用いることで肺胞オルガノイドの細胞外環境を操作することによって、ガス交換能を有する肺胞チップを創出することを目指す。また、開発した新規肺胞チップを用いて呼吸器疾患の病態解明と新規治療薬開発にも挑戦する 。 2023年度は間質性肺炎やウイルス性肺炎等の肺疾患病態モデルの作製と応用を目指し、ヒトiPS細胞等から肺胞オルガノイドおよび肺胞チップを作製した 。作製した肺胞オルガノイドの細胞構成比率やその局在を、シングルセルRNA-seq解析や免疫染色法により確認した。また、肺胞オルガノイドをマイクロ流路デバイスに搭載し、気流や伸縮刺激を付与することで成熟化させ、ガス交換能を有する肺胞チップのプロトタイプの開発を行った。さらに、開発した肺胞チップにおいてガス交換能を評価するための酸素センサーなどの周辺機器の整備も行い、呼吸器能評価に関する予備的な検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、間質性肺炎やウイルス性肺炎等の肺疾患病態モデルの作製と応用を目指し、ヒトiPS細胞から肺オルガノイドを作製し、マイクロ流体デバイスへの搭載を行っている。2023年度は、ヒトiPS細胞から肺オルガノイドへの分化誘導法の開発を行った。ヒト肺オルガノイドの細胞構成比を明らかにするため、scRNA-seq解析を行なった。作製したヒト肺オルガノイドに含まれる呼吸器上皮細胞の割合は、ヒト肺組織における呼吸器上皮細胞の割合とほぼ同じであった。ヒト肺オルガノイドに含まれる線維芽細胞および血管内皮細胞をより詳細に調べるため、サブクラスタリング解析も実施した。血管内皮細胞については、免疫反応に関わる血管内皮細胞のマーカーを高発現する亜集団の存在を確認した。線維芽細胞については、筋線維芽細胞マーカーを強く発現している亜集団の存在を確認した。したがって、作製したヒト肺オルガノイドは、呼吸器上皮細胞の割合の観点だけでなく、非上皮細胞の多様性の観点でも生体肺組織を模倣出来ている可能性が示唆された。マイクロ流体デバイスへのヒト肺オルガノイドの搭載に向けた検討にも着手した。マイクロ流体デバイス内においてガス交換能を評価するため、酸素透過性の低い素材を使用したマイクロ流体デバイスの開発を実施した。また、当該デバイスにおいて、酸素濃度計を搭載し、酸素濃度をモニタリングできることを確認した。今後、上述で作製したヒト肺オルガノイドをマイクロ流体デバイスに搭載することにより、ヒト肺チップの開発を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、開発した肺胞チップを用いて呼吸器能を評価できるか検証する。ヒトiPS細胞から肺オルガノイドへの分化誘導を行い、マイクロ流体デバイス上で物理学的刺激を負荷することで機能的に成熟した肺胞チップを作製する。肺胞チップの遺伝子発現および蛋白質発現を解析し、ヒト肺組織との比較解析を行う。また、肺胞チップにおける各種肺マーカーの免疫組織学的解析により、個々の構成細胞の局在についても明らかにする。作製した肺胞チップにおいてガス交換能を評価するため、酸素センサーを用いた経時的な酸素濃度の測定を行う。ガス交換能を評価可能であった場合、呼吸器能低下を誘発する化合物等を処理することによって、ガス交換能の変動が見られるか確認する。また、ウイルス感染を原因とするガス交換能の低下も再現できるか検討する。肺胞チップの肺胞上皮細胞側からウイルスを感染させたのち、ガス交換能を経時的に測定するとともに、ウイルス排除後あるいは薬物治療後にガス交換能が回復するかどうか明らかにする。
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Research Products
(7 results)