2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ1162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡林 一賢 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | ブラックホール時空 / 熱力学第二法則 / エントロピー / 重力崩壊 / 量子重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
重力崩壊の末にブラックホールが形成される過程で自由場の量子論を考えると、重力の強いブラックホール近傍から熱分布に従う粒子生成が起きることが知られている。これは古典的には生じ得ない量子論的な効果であるため、重力の量子論を探る手立てとして考えられているが、ブラックホールの存在は必ずしも必要ではないことが知られている。実際、重力崩壊している物体が将来ブラックホールにならないとしてもプランク分布に従う熱輻射を生じることが過去の我々の研究によっても明らかになっている。ブラックホール熱力学が量子重力理論への鍵だと考えられている現状を踏まえると、重力場に起因する量子的な熱輻射の熱源が実際にどこに存在するか見直すことは早急に取り組む課題である。この状況を踏まえ、本年度はブラックホール類似天体としてグラバスターを考えると、たとえ天体の表面が静的であっても熱輻射が生じるという非自明な現象を示した。これは天体内部の相転移によって生じる熱輻射であり、重力崩壊を伴わなくとも得られたという点において興味深い結果である。この模型は重力崩壊を伴わないため、熱源がどこに存在するか今後検討する際に有効な例になると期待できる。 そしてこの結果にとどまらず2023年度では以下の研究成果を得ることができた。(1)連星ブラックホールが衝突するときに生じる重力波は、最終的に形成するブラックホールの灰体因子によって特徴付けられることを示した。(2)長らく議論となっていた宇宙の波動関数の不定性(経路積分に寄与する鞍点の選び方)について、リサージェンス理論からその不定性を解消できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事象の地平面を持たないブラックホール類似天体が形成されたとき生じる粒子生成には、豊かな性質があることが明らかになった。特に、重力崩壊を伴わずとも天体内部の相転移によって熱輻射が生じることを明らかにしたことは、その非自明さだけでなくブラックホール熱力学を見直す必要性を認識させるという意味で重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今までに蓄積してきた例などから、ブラックホールが形成されないときの熱輻射がどこから生じているのか当初の予定通り検証していく予定である。また、新型コロナウイルス感染症の影響も大きく改善している状況なので、得られた研究成果に関して国内外の研究者との積極的な議論や共同研究を通して本研究の遂行を加速し、最終的な成果につなげたい。
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Causes of Carryover |
参加予定だった海外での国際会議が、新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ戦争の影響で縮小・オンライン化され予算を執行できなかったため。今年度は、世界情勢に注意を払いつつも積極的に主張等を行う予定である。
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Research Products
(5 results)