2023 Fiscal Year Research-status Report
スロースリップの世界的な広帯域検出:測地データによるその普遍性・地域性の考察
Project/Area Number |
23KJ1184
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 悠太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | スロースリップイベント / GNSS / 西南日本 / アラスカ州中南部 / 東北日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、継続期間が数日間から数週間である短期的スロースリップイベント(SSE)に主に着目して、SSE活動の地域間比較研究に取り組んだ。初めに、Okada et al. (2022)及びOkada & Nishimura (2023)で提案した系統的検出手法を改良し、西南日本、アラスカ中南部、東北日本のGNSS観測局に適用して、3地域で計440の短期的SSEを検出した。 また、アラスカ中南部では、継続期間が数か月間から数年間である長期的SSEについても、目視での検出とすべり分布推定を行った。その結果、長期的SSEが主に3つの領域で発生し、SSE発生域が1964年に発生したアラスカ地震の3つのアスペリティの深部延長に位置していること、及び長期的SSE発生期間中の短期的SSEの活動度に地域差があることが明らかになった。更に、アラスカ州コディアック島に設置されたGNSS観測局のデータに着目すると、これまでSSE期間とみなされてきた時期以外にも、プレート境界断層のすべり速度が変化している可能性が示唆された。 系統的検出により得られた短期的SSEのカタログと、本研究及び先行研究により得られた長期的SSEの分布を用いて、西南日本、アラスカ中南部、東北日本におけるSSE活動の地域間比較を行った。その結果、これら3地域では、SSEが巨大地震のすべり域の浅部もしくは深部延長に分布しており、SSE発生域は巨大地震の余効すべり域に重なるという共通点が見られた。また、3地域における短期的SSE発生数の海溝に平行な方向の違いが、海洋プレートの傾斜角や、海洋プレートと陸側プレートの組み合わせといった、沈み込み帯の環境的要素の違いと関連していることが明らかになった。 これらの研究結果について、国内学会や国際ワークショップで発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、当初の計画とは課題に取り組む順番を入れ替え、SSE活動の地域間比較を先に実施した。その結果、SSEの発生数分布と関連がある沈み込み帯の環境的要素が明らかになったとともに、比較対象としたそれぞれの地域における個別の解析においても、SSE活動の時間的、空間的な変化を捉えることができた。 また、継続期間に依らず微小なSSEを検出する手法についても、観測局分布が比較的疎な地域でも適用できるよう、現在試行錯誤を行っている。 以上の点から、計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、継続期間に依らず微小なSSEを検出する手法の開発を継続して実施する。また、開発した手法を、2023年度の解析で、SSE期間以外にもプレート間すべり速度が変化している可能性が示唆された、アラスカ州コディアック島に設置されたGNSS観測局のデータに適用する。この解析において、1964年アラスカ地震による粘弾性緩和等の現在進行中のプレート境界すべりとは直接関係ない地殻変動が、検出したSSEのすべり分布推定に影響を与える可能性が考えられる。これらのSSEと関係のない地殻変動については、先行研究(Suito & Freymueller, 2009; Wang et al. 2024)のモデルを使ってSSEに対する影響を補正することを計画している。更に、コディアック島のGNSS観測局分布は比較的疎であるため、合成開口レーダー等の他の測地データを研究に取り入れる可能性を検討している。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況と博士論文の執筆状況を考慮して、当初予定していた学会に出席しなかったため。アメリカ合衆国で開催される国際学会出席と、同国在住の共同研究者との打ち合わせのための海外出張旅費として使用する予定である。
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