2023 Fiscal Year Annual Research Report
室町時代土佐派絵所の実態について―土佐派漢画に着目して―
Project/Area Number |
23KJ1224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 かれん 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | 土佐光信 / 土佐光茂 / やまと絵 / 水墨画 / 和漢融合 / 筆様/画体 / 後土御門天皇 / 戦国期足利将軍 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、土佐光信の基準作の一つである「十王図」(京都・浄福寺蔵、以下浄福寺本)を研究対象とした。浄福寺本は、画中に水墨表現を含み、光信の水墨画学習を論じる上で重要であるにも関わらず、二尊院蔵「十王図」(以下二尊院本)の忠実な模写本と考えられてきたため、これまで様式比較の俎上に載ることがなかった。しかし、浄福寺本の水墨部分を観察すると、光信の筆法は二尊院本のそれとは異なる上に、先行研究で光信の絵巻表現に摂取されていると指摘された夏珪様のみでは説明できないと思われた。 まず、浄福寺本表装裏墨書と『実隆公記』の記述より、浄福寺本が使用された儀礼は、四十八歳の年(阿弥陀四十八誓願の数と一致)に行われたもので、逆修と曼陀羅供と寿像供養を兼ねるものであったことを明らかにし、天皇にとって重要な意味をもつ儀礼であったと位置づけた。次に、浄福寺本の水墨表現を分析し、能阿弥や牧谿・梁楷との類似を新たに指摘した。最後に、光信が摂取し、浄福寺本に反映した水墨表現は、将軍家御物で重要な位置を占めた中国絵画の筆様であるため、応仁の乱を経て権力が低下しつつあった将軍家の権威の象徴を、天皇が宮廷美術に吸収しようとしたのではないかという結論を導いた。この研究成果を日本宗教文化史学会23年度12月例会(於同志社大学)で発表し、同学会誌に投稿、採録が決定している(村上かれん「浄福寺本十王図をめぐる逆修の儀礼と土佐光信の水墨表現」〈『日本宗教文化史研究』28(1)、2024年6月刊行予定、査読あり)。これに関連して、光信の跡を継いだ息子光茂の水墨表現に着目し、光茂の画風が父の様式と大きく異なっていることに対して、親子の活動期の間に起きた政治的変化より解明する研究を進め、第77回美術史学会全国大会での口頭発表の実施が決定している。
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