2023 Fiscal Year Research-status Report
ハロゲン化鉛ペロブスカイトナノ粒子の単一ナノ粒子分光による励起子微細構造の研究
Project/Area Number |
23KJ1291
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
張 健一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | ハロゲン化鉛ペロブスカイトナノ粒子 / 単一ナノ粒子分光 / 励起子微細構造 / 励起子格子相互作用 / トリオン / バイエキシトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、単一ハロゲン化鉛ペロブスカイト(APbX3, A = Cs, MA (CH3NH3) , FA HC(NH2)2,X = Cl, Br, I)ナノ粒子の(1)トリオン・バイエキシトンの粒子サイズ依存性、(2)印加電場に対する光学応答、に関する研究を主に行った。 (1)では、異なるAサイトカチオン(Cs, FA)と異なるハロゲンイオン(Br, I)のペロブスカイトナノ粒子を用いて、極低温での発光スペクトルを計測することで束縛エネルギーの値を決定し、またその粒子サイズ依存性を正確に計測した。実験値の物性値による規格化および有効質量近似を用いた理論計算との組み合わせから、トリオン・バイエキシトンの束縛エネルギーの粒子サイズ依存性にはペロブスカイトの組成による影響は少なく、量子閉じ込め効果のみによって決まること、そして動的遮蔽効果が大きな影響を与えることを明らかにした。得られた研究成果は、ACS Nano誌に公表した。 (2)では、フォトリソグラフィーを用いて電極を作製し、極低温で単一CsPbBr3ナノ粒子発光の電場応答を計測した。その結果、印加する電場に対して非対称な発光ピークエネルギーシフトを示し、ナノ粒子内に内部電場が生じていることを示した。また、フォノンレプリカ発光強度から見積もられる励起子格子相互作用強度と求められた内部電場の大きさには相関があり、内部電場によって励起子格子相互作用強度が変化することを明らかにした。(2)に関する研究成果は、応用物理学会にて口頭発表し、また現在学術論文誌に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,申請時の研究目的である電場印加による単一ペロブスカイトナノ粒子発光の物性研究の範囲を超えて,ペロブスカイトナノ粒子の励起子多体効果について評価することができた。さらに、研究成果を応用物理学会で発表し、また学術論文として出版することができた。そのため、現状の進捗状況は当初の本研究申請の目的をおおむね達成していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)はPDに資格変更し、理化学研究所に受入研究機関を変更する。これまでに身に着けた低温顕微分光などの技術を生かして、ナノ粒子やカーボンナノチューブ、層状物質などの励起子物性に関する研究に取り組む。そして、得られた研究成果を積極的に国内・国際学会や国際学術論文で発表していく。
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