2023 Fiscal Year Research-status Report
集合導体の階層構造を考慮したマルチフィラメント薄膜高温超伝導線の交流損失特性評価
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23KJ1355
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
重政 茉於 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 高温超伝導 / 交流損失 / 磁化損失 |
Outline of Annual Research Achievements |
薄膜高温超伝導線を交流で用いると、超伝導層のヒステリシスを伴う反磁化によって交流損失が発生する。薄膜高温超伝導線のうち、交流損失を低減するために超伝導層を細いフィラメントに分割し、超伝導状態が破れにくくするために銅を複合したものを、銅複合マルチフィラメント線と呼ぶ。 令和5年度では、単一の銅複合マルチフィラメント線、および超伝導層が分割されていないモノフィラメント線に、交流磁界を印加、および交流電流を流して、交流損失を測定した。それらの結果から、銅複合マルチフィラメント線に交流電流を流しているときの、電流によって誘起される磁界、および外部から印加される磁界が銅複合マルチフィラメント線の交流損失特性に与える影響について解明が進展した。 受け入れ先の研究室では、SCSCケーブルと呼ばれる、銅複合マルチフィラメント線を素線として集合化した集合導体の研究・開発を行っている。本年度の研究活動の中で、SCSCケーブルを模した、円断面の金属コアの周囲に単一の銅複合マルチフィラメント線をスパイラル状に巻き付けた試料の交流損失を測定した。その結果、金属コアにおける電磁現象が交流損失を予想外に増加させることが明らかになった。 これらの結果には、SCSCケーブルのような集合導体を構成する銅複合マルチフィラメント線(素線)の交流損失特性が解明したという意義があり、集合導体の低交流損失化に寄与する重要な成果である。また、本研究のさらなる進展のためには、金属コアにおける電磁現象が銅複合マルチフィラメント線(素線)の交流損失特性に与える影響についても解明する必要があるため、そのための実験、並びに有限要素法による電磁界解析を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究活動の中で、SCSCケーブルと呼ばれる集合導体において、金属コアにおける電磁現象が銅複合マルチフィラメント線(素線)の交流損失特性に影響を与えるという、新たな課題を発見するに至っており、これは本研究課題が順調に進展しているからこそ起こったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、金属コアにおける電磁現象が銅複合マルチフィラメント線(素線)の交流損失特性に与える影響についても解明する必要がある。そのために、単一の銅複合マルチフィラメント線を用いた実験、または有限要素法による電磁界解析を行う。 その後、当初の予定に基づき、集合導体における素線間の遮蔽電流の交流損失特性に対する影響を評価する。そのためにまず、素線間の遮蔽電流の具体的な評価方法を検討する。次に、集合導体と同じ形態の、複数の銅複合マルチフィラメント線を用いた試料の交流損失を測定する。同時に、上で検討した評価方法に基づき、素線間の遮蔽電流を評価する。それらの結果を単独のマルチフィラメント線・モノフィラメント線の交流損失と比較し、各素線の交流損失特性に対する素線間の遮蔽電流の影響を解明する。 以上と平行して、今までに得た単一の銅複合マルチフィラメント線(素線)の交流損失特性に関する知見を整理する。
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Causes of Carryover |
当初計画より、次年度に新たなデジタルマルチメータを導入する予定であったが、今年度の研究で得た知見より、次年度にデジタルマルチメータを複数個導入する可能性が生じ、従って購入費が当初計画より増大する可能性がある。加えて、本研究課題に関連する実験を次年度に国外の研究機関で実施する計画が新たに立ち上がった。そのため、本年度の予算支出を抑え、次年度のデジタルマルチメータの購入費、並びに旅費に充てることにした。
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