2023 Fiscal Year Research-status Report
スパース同定を用いた弱拘束かつ水域特性を考慮可能な低次生態系モデルの構築
Project/Area Number |
23KJ1430
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鹿島 千尋 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | スパース同定 / 低次生態系モデル / 水質シミュレーション / 瀬戸内海 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はスパース同定の低次生態系モデルへの適用と陸域モデルの改良,海域モデルを用いた瀬戸内海の流動解析に注力した. スパース同定手法のうち,Sparse identification of nonlinear dynamics (以下,SINDy)が開発環境の利便性,適用実績の多さの点から,低次生態系モデルに適用するにあたり最適であると判断した.SINDyでは,テストデータと項の候補ライブラリ,ハイパーパラメータから,テストデータの時系列変化を再現するのに最適な支配方程式・パラメータを推定が可能である.計画当初は現地観測データをテストデータとして使用することを予定していたが,正しく推定を行うためには時間解像度が高いデータが必要となることが明らかとなった.そこで計画を変更し,まず閉鎖系完全混合槽1ボックスの低次生態系モデルを構築し,疑似的な観測データを作成し,得られた疑似観測データをテストデータとし,SINDyの適用性を評価した.その結果,もとのモデル式を概ね再現することが可能であり,適用可能であることが明らかになった. 陸域モデルについては分布型流出モデルを瀬戸内海集水域に適用した.集水域内に存在する点源負荷源データの整理を行い,入力として用いるようモデルを改良した.数値計算面では,計算領域の分割を行うことで,計算コストの低減を実現した. 海域モデルについては瀬戸内海-太平洋領域モデルを構築し,再現性を検証した.構築したモデルを用いて,地形改変が瀬戸内海の流動構造に及ぼす影響について解析を行い,広域で潮位振幅が変化していることを明らかにした.また外洋境界条件が瀬戸内海の流動に及ぼす影響について解析を行った.その結果,外洋境界に使用する解析プロダクト次第で黒潮の流路が変化し,瀬戸内海の水温・塩分,通過流量に顕著な違いが生じることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画を一部変更し,現地観測データではなく,閉鎖系完全混合槽1ボックス低次生態系モデルによって得られた疑似的な観測データからテストデータを作成したものの,スパース同定の低次生態系モデルへの適用を終えており,概ね順調に進んでいるといえる. 陸域モデルの開発については,詳細な点源負荷データを入力に用いることで各湾灘に流入する汚濁負荷量を精確に見積もることが可能となった.こちらについては今後,成果公表に努めたい. 海域モデルについても,瀬戸内海-太平洋領域モデルを構築が終了し,再現性の検証も終えている.低次生態系モデルを用いた流動水質シミュレーションにも着手しており,モデル改良の準備が整いつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
スパース同定について,本年度は疑似観測データの適用にとどまったが,次年度は植物プランクトンの増殖実験などを行い,実際に得られたデータからテストデータの作成を行い,SINDyの適用性を評価する予定である. 陸域モデルについては,モデル検証は終了しており,各湾灘に流入する負荷量の算定を行う. 海域モデルについては,低次生態系モデルの改良を進め,実際に貧栄養化対策として実施されている海域への栄養塩の投入などについて,施策評価を行う. また,引き続き論文投稿などを進め,研究成果の公表に努める.
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Causes of Carryover |
大型計算機使用料を予算計上していたが,スパコン共同研究プログラムに参画し,理化学研究所が保有する富岳を利用したため,次年度使用額が生じている.計算量および計算結果データ量が想定より多くなっていることから,計算機と保存用ストレージの購入を予定している.また,成果公表にも充てる予定である.
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