2023 Fiscal Year Research-status Report
環境汚染物質の触媒的変換を志向したN-ボラン環状ホスフィンイミドの開発
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23KJ1443
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長井 駿 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 環境化学 / ホスフィンイミド / 二酸化炭素 / クロロボラン / ボレニウム種 / ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、当研究室で合成した革新的化合物「N-ボラン置換環状ホスフィンイミド (BCPI)」を利用して、クロロボラン試薬との反応性の調査に取り組んだ。二酸化炭素や塩化メチレンとの固定化を解明する中で、クロロボラン試薬との反応によりクロロアニオンを含むBCPI骨格を有するボレニウム種が定量的に確認された。この発見から、クロロボランとの反応性をさらに追求することにした。具体的に、室温下にて1当量のBCPIと1当量のクロロカテコールボランを15分間反応させたところ、目的化合物が83%の収率で単離された。この化合物の分子構造はNMRおよび単結晶X線構造分析によって明確に確認された。一般的に、ボレニウム種はルイス酸存在下で脱離基が外部求核剤に形式的に置換されることにより生成されることがよく知られている。ボレニウム種の形成については、2つの主要な機構があり、1つ目は脱離基Xを持つB-Xの不均一開裂を伴う段階的な機構である。この機構は、ルイス酸による脱離基の捕捉によって、ボレニウム種を生成する。もう一つの機構では、これらのステップが協奏的に進行する。以前の研究では、脱離基が十分に安定で自発的にルイス酸-塩基付加物から解離する場合のみ進行すると考えられており、比較的強いB-Cl結合の切断はルイス酸の添加によって主に進行することが示されていた。今回の研究結果は、ルイス酸を使用しない条件下でクロロボランとBCPIのみの反応からボレニウム種が直接確認される初めての例である。 現在、反応機構の詳細な解明とこれに基づく固定化の改良が課題であり、調査中である。また、BCPIの反応性に関しても、新たな分子との反応およびBCPIの触媒化への展開を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、ルイス酸を使用しない条件下でクロロボランとN-ボラン置換環状ホスフィンイミド (BCPI) のみの反応からボレニウム種が直接確認された初めての例である。また量子化学計算にて、BCPIの電子的および構造的な特性やクロロボランとの詳細な反応機構を解明したため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
量子化学計算にて得たれたN-ボラン置換環状ホスフィンイミド (BCPI)の電子的および構造的な特性やクロロボランとの詳細な反応機構の知見を基に、BCPIの触媒化を進める。これにより、二酸化炭素や塩化メチレンの無害化および有用分子への変換の方法を確立させる。
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Causes of Carryover |
予定より旅費を使用しなかったことが挙げられる。今年度は研究で得られた成果をもとに、国内外の学会にて発表を行い、研究結果の広報に努めたい。
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