2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ1450
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中馬 俊祐 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 神経分化 / 細胞内温度 / 量子センサー / 温度シグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
① 本研究では、既に神経分化時に細胞内の自発的な熱産生をポリマー型の細胞内温度センサーで計測できている。今回その結果に加えて、量子センサーである蛍光性ナノダイヤモンド(FND)においても類似した分化時の細胞内温度上昇を計測することができた。また、FNDによる細胞内温度計測にあたって、FNDの表面を化学修飾し電荷を変化させることで高効率に細胞内に取り込ませること手法を開発した。 ②ポリマー型の温度センサーの特性を利用して、熱吸収ポリマーとして使用することで、神経分化時の細胞内温度上昇を抑制する実験を行った。その結果、熱吸収しないコントロールポリマーを注入した細胞では、通常の神経細胞と同様に神経突起の伸長が確認された一方で、熱吸収ポリマーを注入した神経細胞では、神経突起の伸長を著しく阻害することができた。この結果は、神経分化のプロセスにおいて細胞内の熱産生が神経突起の伸長において必要であることを発見した。 ③本研究では、既に神経成長因子(NGF)により神経分化誘導時に核内を加熱すると神経突起の伸長が促進されることが分かっている。他の実験から得られた細胞内の温度上昇の分化における重要性から、NGFを使わずに核内の加熱だけで神経分化が誘導できるか調べた。その結果、加熱しない細胞に比べて、核内を加熱した細胞では神経分化率が有意に上昇する結果が得られた。温度が分化因子の一つになる可能性を示しており、近年提唱されつつある温度が細胞機能を制御する機構、「温度シグナリング」の提唱に一歩前進したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの結果から、細胞内の温度は、細胞分化などの生命現象において重要な因子であり、細胞自身が自律的に温度を上昇させ、細胞機能を駆動していること(=温度シグナリング) が提唱することができた(S. Chuma, et. al., Nat. Commun., 2024) 。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から細胞自身が自律的に温度を上昇させ、細胞機能を駆動していること(=温度シグナリング) が明らかとなった。今後は、この自発的な温度上昇に着目し、どのようなメカニズムで温度が上昇し、どのように転写、翻訳などの細胞内反応に寄与しているか詳細な分子メカニズムを生化学的な解析等を用いてい明らかにしていきたい。 温度シグナリングの詳細な分子機構を解明したい。
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Causes of Carryover |
研究遂行に際して、共同研究先にて当初予想し得なかった新しい知見が得られたことにより、当初の計画の改良及びスケジュールの変更が必要となり、想定外の日数を要したため。 次年次の使用計画については、細胞内温度操作技術を駆使して、転写反応と細胞内温度の関係をより詳しく解析する予定。併せて、他の細胞学的な現象にも着目し、細胞内温度との関係を調べたいと考えている。
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