2023 Fiscal Year Research-status Report
頭蓋内循環のメカニクスに基づく正常圧水頭症の病態機序の解明
Project/Area Number |
23KJ1471
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 修作 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 脳脊髄液流れ / 正常圧水頭症 / 脳脊髄液混合 / 脳室系 / 物質輸送動態 / 脳循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,昨年度に構築した,移動境界問題により表現した脳脊髄液流れの計算力学モデルを高齢健常者にも適用し,水頭症患者,高齢健常者,若年健常者間の脳脊髄液混合の差異を定量的に明らかにし,加齢による脳脊髄液ダイナミクスへの影響に関する新たな知見を見出した.本解析により,加齢による脳脊髄液ダイナミクスの変化は,水頭症と比較し軽微であることを確認することができた.よって,高齢水頭症患者で確認できる脳脊髄液ダイナミクスの変化は水頭症に起因することを明確化することができ,水頭症と脳脊髄液ダイナミクスの関係性に関しての理解を進展させた.また,頭蓋内を脳室系,白質,灰白質,くも膜下腔などの複数のコンパートメントで表現し,コンパートメント間の水の輸送を物質濃度差と物質拡散によって支配されると仮定した計算力学モデルの構築を行った.この基盤モデルにより頭蓋内中の大域的な水輸送動態を解析することを目指しており,次年度からはMRIにより取得した脳内の酸素同位体の時空間分布計測データを基に本モデルの有効性を評価する.また,今年度は長時間スケールの脳脊髄液流れの解析にも着手し始めた.具体的には脳室内に造影剤を注入し,90分間にわたり造影剤の時空間分布を追跡した計測データを有しており,造影剤の時空間分布に対しデータ同化などの逆解析手法を適用することで,脳室内の長時間にわたる脳脊髄液動態の把握を試みた.手法としてPhysics-Informed Neural Networksによる逆解析を導入し,簡易形状における定常・非定常流れの解析の妥当性を評価した.今後は実計測データに対し,この手法を適用することを目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水頭症患者における脳脊髄液動態に関する論文をバイオメカニクスに関する国際雑誌「Journal of Biomechanics」に投稿した.また,水頭症と加齢の脳脊髄液ダイナミクスの差異を定量化することができ,高齢水頭症患者における脳脊髄液ダイナミクスの変化が水頭症に起因するものであることを強調することができた.また,頭蓋内の大域的な水輸送動態を表現する計算力学モデルの基盤モデルを構築することができた.次年度に,実際の医用計測画像と計算力学モデルによるシミュレーション結果を比較し,計算力学モデル有効性を評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,位相コントラストMRIによる計測データから算出した脳脊髄液流量を基に計算力学モデルの構築を行い,短時間スケールの脳脊髄液流れの解析を進めてきた.今後は,脈絡叢からの脳脊髄液の産生を考慮した長期スケールの脳脊髄液流れに焦点を当てる.具体的には,脳室内に注入した造影剤の時空間分布計測データに対し逆解析を行うことで脳室内の長時間の脳脊髄液動態の解析を試みる.また,医用画像計測結果と構築した計算力学モデルの比較を行い,白質,灰白質,脳室,くも膜下腔などの頭蓋内における複数のコンパートメント間の大域的な水輸送動態について評価を行う.
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