2023 Fiscal Year Research-status Report
アシルシランを前駆体とするカルベン・カルビン錯体の発生法開発と触媒反応への応用
Project/Area Number |
23KJ1498
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲垣 徹哉 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Keywords | アシルシラン / パラジウム触媒 / イミン / β-ラクタム / フィッシャーカルベン錯体 / トリフルオロアセチルシラン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は昨年度、「アシルシランを前駆体とするカルベン・カルビン錯体の発生法開発と触媒反応への応用」という研究課題を実施し、この分野を大きく前進させた。この研究の意義の1つは、フィッシャーカルベン錯体の触媒的発生法の確立である。フィッシャーカルベン錯体は、カルベン炭素にヘテロ原子が結合したカルベン錯体であり、適切なカルベン前駆体が存在しないため、触媒反応での利用が未開拓であった。 この背景から、研究代表者は以前、アシルシランとパラジウムとの反応によってフィッシャーカルベン錯体が触媒的に発生することを見出し、アルケンとの反応によりシロキシシクロプロパンを与える反応を報告した(J. Am. Chem. Soc., 2022, 144, 1099)。この素反応を応用し、研究代表者はアシルシランとイミンと一酸化炭素との3成分カップリングによって、抗生物質の主要骨格であるβ-ラクタムの触媒的合成法を確立した。さらに、この反応の重要な中間体であるフィッシャーカルベン錯体を単離し、X線構造解析によってその構造を明らかにした。これらの研究成果は、Nature Catalysisに掲載された(Nat. Catal. 2024, 7, 132)。 また、トリフルオロアセチルシランも同様のパラジウム触媒系によって対応するフィッシャーカルベン錯体を与えることを発見した。また、アルケンと反応することでシロキシシクロプロパン化反応が進行することも見出した。さらには、アレンに対してベンゾイルシランと同様にシリルアシル化反応が進行することも合わせて見出した。この研究成果はOrganic Letterに掲載された(Org. Lett. 2024, 26, 2141)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者はパラジウム触媒存在下アシルシランとイミン、そして一酸化炭素との反応によって、抗生物質の主要骨格であるβ-ラクタムを触媒的に合成する方法を確立した。さらに、パラジウム触媒とアシルシランからフィッシャーカルベン錯体が発生することを中間体であるフィッシャーカルベン錯体を単離することで示した。これにより、これまで困難であったフィッシャーカルベン錯体の触媒的な発生を可能にし、研究の進展に大きく貢献した。さらに、トリフルオロアセチルシランも同様の触媒系からフィッシャーカルベン錯体を与えることも見出した。これらの研究の成果は、研究課題の進展に大きく貢献し、予定よりも早い段階で重要な発見をもたらした。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度、研究代表者はアシルシランがパラジウム触媒と反応することで、フィッシャーカルベン錯体が触媒的に発生することを見出し、これまで困難とされていたフィッシャーカルベン錯体の触媒的発生法を確立した。今年度は、研究計画の後半に示したLewis酸によるシロキシカルベン錯体の活性化により生成するカチオン性カルビン錯体を利用した新規反応開発を検討する。上記研究計画に加えて、フィッシャーカルベン錯体あるいはカルビン錯体の新規触媒反応も新たに考案し検討する。
|