2023 Fiscal Year Research-status Report
拡がりのある演算子を持つ場の量子論のダイナミクスおよびその重力双対に関する研究
Project/Area Number |
23KJ1533
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嶋守 聡一郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 一般化対称性 / 非可逆的対称性 / 非局所演算子 / エンタングルメントエントロピー / 共形場理論 / 双対性 / defect CFT / フュージョン代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
場の量子論には数多くの拡がりのある演算子(非局所演算子)が出現し、それらのダイナミクスを理解することは極めて重要な意義を持つ。例えば、Wilson loopと呼ばれる線状に拡がった演算子は閉じ込め相/非閉じ込め相の秩序パラメーターを担うため、ゲージ理論の相構造に対して重要な示唆をもたらす。特に、近年一般化対称性が盛んに議論されている。そこでは、対称性の定義をトポロジカルな演算子の存在性と一般化される。この一般化対称性を駆使することで従来の場の量子論では見えていなかった側面を解明することができる。本年度はこのような対称性に関する研究を中心に行なった。
まずは、一般化対称性の中でも特に非可逆的対称性に関する研究である。非可逆的対称性は2次元有理共形場理論(rational CFT)において数多くの例が知られていたが、無理共形場理論(irrational CFT)において存在するかどうかは非自明である。我々は、半空間ゲージ化と呼ばれる非可逆的対称性の構成法を2次元c=2トーラス共形場理論に応用することによってirrational CFTにおいても非可逆的対称性は存在することを示した。さらにそのフュージョン代数は一般に非可換代数になることを示した(10.1007/JHEP12(2023)062)。
次に、boson/fermion 双対性に関する研究である。古くからこの双対性は知られていたが、特に近年離散対称性のゲージ化の進展に伴い、多様体が非自明なサイクルを持つ場合のboson/fermion 双対性がrefineされた。我々はこのrefineされたboson/fermion 双対性を2次元無質量Thirring模型という相互作用のあるフェルミオン系に適用することにより2nd Renyi entropyを厳密に導出した (10.1103/PhysRevD.108.125016 )。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は主に一般化対称性に関する場の量子論の研究を行なった。一般に無理共形場理論にはカレント代数などのカイラル代数が存在しないため無限個のプライマリー場が存在し、フュージョン代数などの構造はよく分かっていない。そこで、我々はそのような無理共形場理論においても非可逆的対称性は存在することを示し、そのフュージョン代数の構造を議論した。この結果は非可逆的対称性がよく知られていない共形場理論の構造を明らかにしたという点で重要であると言える。また、現代的な離散対称性のゲージ化の理解を利用することで、相互作用のある2次元フェルミオン模型の2nd Renyi entropyを厳密に導出することに成功した。
さらに、年度内には出版には至らなかったものの、欠損入り共形場理論(defect CFT)の研究に関しても新しい結果を得ることができた。従来のdefect CFTの文脈では、1種類の欠損のみを考えていたが、自然界には境界などの欠損それ自身がさらに次元の低い欠損を抱えているという物理系が存在する。私はこのような複合的な欠損が存在する系の共形場理論の構造を一般的に調べ、多くの新しい結果を得ることができた。
以上から、現在までの進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も今年度に引き続き、一般化対称性およびdefect CFTの研究を続ける予定である。具体的には、一般化対称性を用いて場の量子論や弦理論に非自明な制限をつけることができないかについて研究を進める。また、defect CFTに関しては、先に説明した複合的な欠損のダイナミクス(繰り込み群の流れや具体的な模型の構築)を明らかにしていきたい。
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