2023 Fiscal Year Research-status Report
暗黒物質としての原始ブラックホール及び電弱バリオン数生成の重力波による同時検証
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23KJ1543
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮地 大河 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | トンネリング / 1次相転移 / ドジッター時空 / 確率的手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホールがトンネリング(1次相転移)に与える影響を定量的に評価する基礎理論を構築し、今後発展する重力波を用いた宇宙の精密観測へ向けた理論的予言を与えることが本研究の目的であった。そのために、実時間発展の中でトンネリングを記述する描像に着目し、その基礎理論の構築を目指していた。 2023年度では実時間形式のトンネリングにおいて量子揺らぎが果たす役割を明らかにするために、de Sitter時空中における確率的手法に着目した。確率的手法では量子揺らぎが確率過程におけるノイズに置き換えられており、ノイズ力によってポテンシャル障壁を乗り越えているとみなせる。本研究では、Schwinger-Keldysh形式を用いて確率的過程を導く経路積分形式を構築した。この形式に対して鞍点近似を適用して空間的に一様なトンネルリングが起こる確率を計算したところ、HawkingとMossが虚時間形式で計算した結果と一致した。また、空間的に非一様なトンネリングに対しても、この経路積分形式が有用であることを、具体的な計算で示した。この経路積分形式はバブル生成がある場合、揺動と散逸がある場合、ブラックホール時空の場合など、より一般的な状況にも適用できると考えている。現在はde Sitter時空特有のノイズを排除するために、平坦時空の場合におけるこの手法の適用を模索している。 本研究成果について、論文を執筆して発表した。また、日本物理学会を含む6件の学会・研究会にて口頭発表を行い、海外の研究会においてポスター発表を1件行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、初期量子揺らぎの古典的時間発展によってトンネリングを記述する手法に着目していた。しかし、時間発展中の量子性を完全に無視したり、初期量子揺らぎの選び方に不定性があるなど、理論的な正当性に疑問が生じていた。そこで、量子性をノイズの形で取り入れることができる確率的手法に着目し、トンネリングを記述するための手法を構築できた。これによって、トンネリングにおける量子的なノイズの役割についての理解が大きく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度で構築した経路積分的手法を、平坦時空における非一様なトンネリングの場合にも適用できるように改良していく。その上で、ブラックホール時空におけるトンネリングへの拡張を目指す。
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Research Products
(9 results)