2023 Fiscal Year Research-status Report
宿主感染に重要な細菌鉄取込み系のシグナル伝達機構の解明~次世代抗菌薬創出に向けて
Project/Area Number |
23KJ1581
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
横山 達彦 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 鉄取り込み系 / 大腸菌 / anti-sigma factor / iron uptake |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄は細菌が生存する上で必須の元素であるが、環境中で細菌が利用できる鉄は微量しか存在しないため、細菌は外界の鉄を細胞内に取込むシステム(鉄獲得系)を高度に進化させてきた。鉄獲得系を構成する遺伝子の中には、細菌が細胞外の鉄を認識することで発現が誘導されるものも多い。しかしながら、細菌が細胞外の鉄の存在を如何にして認識し、如何にしてそのシグナルを細胞内へと伝達しているかというメカニズムの詳細は明らかになっていない。 研究代表者らは、グラム陰性細菌に広く保存され、病原性因子でもある鉄獲得系Fecシステムにおいて、鉄シグナルの伝達を担っている一回膜貫通タンパク質FecRを対象として、そのシグナル伝達機構の解明を目指してきた。これまでに研究代表者らは、(1)FecRが鉄シグナルに応答して3段階もの連続的な切断を受けること、(2)さらにその結果生じた切断断片が、細胞質に存在するシグマ因子を活性化することで、鉄獲得系の遺伝子の発現が誘導されることを報告した(Yokoyama et al., 2021, J. Biol. Chem.)。本計画ではこの研究を更に進展させ、FecRが受ける多段階切断が活性化されるメカニズムの解明を目指している。本年度はまず、FecRタンパク質の検出・解析系をブラッシュアップし、変異解析を行うことで、この切断カスケードの活性化に重要なFecR内の領域を明らかにした。さらに、FecRの膜挿入状態をモニターできる実験系を新たに立ち上げ、FecRの膜挿入と多段階切断との関係を解析し、切断カスケードの活性化機構がFecRタンパク質の膜透過と密接に連携していることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受け入れ研究室である奈良先端科学技術大学院大学・塚崎教授の研究室に本年度から参加した。本年度は申請計画に沿って、大腸菌が有する鉄獲得系の転写制御を担う一回膜タンパク質FecRの機能解析を進め、FecRが鉄シグナルを伝達する機構の解明を目指した。まず、研究室異動に伴って、前研究室で使用していた大腸菌の培養系とタンパク質の解析系等を受け入れ研究室に導入・改良し、研究を実施するための土台を整えた。続いて、新たにFecRタンパク質の膜挿入状態を解析できる実験系を立ち上げ、FecRの膜挿入と連続的切断の制御機構を解析した。また、論文の執筆に向けて、これまでに得ている実験結果のブラッシュアップも進めた。本年度は、これらの結果を含め、これまでに得られた成果を、国内学会で発表した。さらに本年度は、前年度から継続していた関連する研究をまとめて、米国微生物学会(ASM)の学会誌mBioに報告し、その成果も国内学会で発表した。以上のように、申請課題が計画通りにプログレスしていることから、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も申請計画に沿って、FecRが受ける切断カスケードの制御機構の解析を更に進め、成果をまとめて論文として報告する計画である。また申請計画に則り、FecRタンパク質と、FecRの切断カスケードの制御に重要な役割を果たしていると予想される因子との相互作用解析も進める計画である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:当初はFecRの膜透過を解析するために、ラジオアイソトープを用いる計画であったが、使用せずとも実験系を構築することに成功したため。 次年度使用額の使用計画:次年度より異動を予定しており、異動先で実験系をセットアップするために使用する計画である。
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[Presentation] Structure-based gating model for substrate accommodation and intramembrane proteolysis of E. coli site 2-protease (S2P), RseP2023
Author(s)
Yohei Hizukuri, Yuki Imaizumi, Kazunori Takanuki, Takuya Miyake, Tatsuya Kobayashi, Tatsuhiko Yokoyama, Rika Oi, Terukazu Nogi, Yoshinori Akiyama
Organizer
IPS2023, 12th General Meeting of the International Proteolysis Society (Singapore)
Int'l Joint Research