2023 Fiscal Year Annual Research Report
ゼニゴケ仮根の伸長方向を制御するNIMA関連キナーゼの機能解析
Project/Area Number |
23KJ1608
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
間瀬 輝 岡山大学, 環境生命自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞極性 / NIMA関連キナーゼ / ゼニゴケ / 微小管 / 相互作用因子の解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞極性は細胞の運動,分裂,成長に不可欠であり,全ての生物に必須の役割を持つ。しかし細胞極性の獲得機構はよくわかっていない。これを明らかにするため,本研究ではNIMA関連キナーゼ(NEK)に着目した。NEKは真核生物に共通したタンパクキナーゼで,菌類・動物では主に細胞分裂を,植物では細胞伸長を制御する。原始的な陸上植物のゼニゴケはNEK遺伝子を1つだけ持ち,機能解析が比較的容易である。ゼニゴケNEKは仮根先端の微小管束に局在し, そのターンオーバーを促進して, 仮根細胞の成長方向を制御すると考えられる。しかし,どのように機能するのかはわかっていない。そこで,NEKの役割と作用機構を理解するため,相互作用タンパクの解析を行った。 NEKと相互作用するタンパクを近位依存性ビオチン標識し,LC-MS/MS解析により特定した。その結果,約400のタンパクがMpNEK1と相互作用することを明らかにした。そのうち,約15種類のタンパクはNEK-Citrineと共免疫沈降し,比較的強固にNEKと相互作用することが示唆された。このうち,機能未知のタンパクをコードする新規遺伝子についてゲノム編集により変異株を作出した。表現型を観察すると,伸長方向が異常な仮根が見られた。また,新規タンパクにCitrineを融合させたタンパクの発現系統の観察を行うと,NEKと同様に仮根先端の顆粒状構造に局在した。以上より,このタンパクは仮根伸長を制御する新規因子であり,今回の解析の結果が極めて有用であることが裏付けられた。NEKは様々なタンパクと相互作用し,仮根の伸長方向を決定するマスターレギュレーターであると考えられる。植物には菌類や動物の極性化因子のホモログが存在しないが、NEKを軸とするタンパク複合体が進化し,極性化を担うことで,土壌への固着や水分・養分の吸収を行う仮根形成に寄与したと考えられる。
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