2023 Fiscal Year Research-status Report
中枢移行性を考慮したヒトiPS細胞技術を用いた神経毒性評価法の構築
Project/Area Number |
23KJ1620
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
柳田 翔太 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 任期付研究員
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 神経毒性 / PFAS / ヒトiPS / 神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機フッ素化合物(PFAS)は様々な用途で使用されてきたが、ヒト血中や脳内から検出されており蓄積性があることから、中枢神経系への影響が懸念される。これまで動物実験により神経毒性が報告されているが、分子の種類が多く、そのメカニズムについては不明な点が多い。そこで、本研究では、ヒトiPS細胞技術を用いてPFAS化合物による中枢神経障害メカニズムの解明を目指す。 本年度は、原著論文や海外評価機関による評価書等によりPFASの健康影響に関する文献調査を行った。その結果、ヒトの疫学研究により、PFASが出生時体重の減少や早産リスク、発達障害リスクと相関しているとの報告があるが、疫学データの相違があることから引き続き、検討が必要である。 次に、生殖・発生毒性試験により、PFOSおよびPFOA は出生率の低下、出生児の体重低下、開眼時期の遅れ等の成長抑制に関する報告がある。また、発達神経毒性試験により、オープンフィールドテストによる運動量の増加などが報告された。これらの報告から、PFASは発達神経毒性の可能性が示唆された。 さらに細胞を用いた研究では、ヒトiPS細胞からドパミン神経への分化に対して、PFASにより初期分化マーカーであるドーパミントランスポーターやチロシン水酸化酵素の発現が抑制されることが報告された。またラット皮質細胞の神経ネットワーク形成を阻害し、ヒトiPS由来神経細胞の神経突起伸展を阻害することが報告された。従って、PFASは神経系の形成や機能に対する影響が示唆された。しかしながら、PFASによる発達神経毒性のメカニズムについてはいまだ不明な点が多い。 今後は、PFASによる発達神経毒性メカニズムを明らかにするために、ヒトiPS細胞から神経細胞への分化過程に対するPFAS化合物の影響を解析する予定である。将来的に、PFASの健康影響評価に有益な情報を提供することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献などの調査により、ヒトや動物の中枢神経系に対するPFASの影響をまとめることができた。これらの情報により、ヒトiPS細胞によるメカニズム研究へと展開し、PFASの健康影響の総合的な評価につながると考えられる。また、解析に向けて、PFAS化合物の7種類を入手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒトiPS細胞技術を活用し神経細胞の分化に対するPFAS化合物の影響を解析する予定である。 入手できたPFAS化合物7種類について解析を進める予定である。さらに入手できていないPFAS化合物についても入手に向けて手続きを進めている。
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Causes of Carryover |
研究に使用する化合物(PFAS化合物)の入手にあたり手続きが必要であり、2023年度中に購入ができなかったため、次年度使用額が生じた。2024年度の購入手続きを順次進めており、PFAS化合物を購入する予定である。 2024年度分として請求した助成金については、PFAS化合物の購入に加えて、予定していた細胞や細胞培養に必要な試薬の購入や学会参加に使用する予定である。
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