2023 Fiscal Year Research-status Report
Analysis and application of the morphological changes of cyanobacteria under grazing pressure
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23KJ1639
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
戸田 成美 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | Microalgae / Contamination / Predation / Cyanobacteria / Morphology |
Outline of Annual Research Achievements |
微細藻類は幅広い分野における物質生産ホストとして期待されているが、コンタミ菌による捕食被害が実用化における障壁となっている。これまでに藍藻Synechococcus elongatus PCC 7942を捕食する原生生物としてPoterioochromonas malhamensisを特定し、二者の共培養系から捕食被害を逃れる異常に伸長したPCC 7942株を単離した。本研究では、捕食圧下における藍藻伸長現象を利用し,細胞サイズに着目した捕食対策法の開発を目指す。 本年度は,取得した藍藻伸長株の伸長メカニズムを解明するため,取得している伸長株のゲノム解析を行った。その結果,細胞分裂や細胞壁生合成に関する遺伝子に変異が生じていたことが明らかになった。各変異遺伝子と細胞形態との関連を調べるため当該遺伝子の破壊株を作製し細胞形態を観察したところ,共培養系から出現した伸長株と同様の形態を示したことから,当該遺伝子変異が伸長形態の原因であることが示された。 また,藍藻伸長株の実用培養における有用性を調べるため,100 Lフォトバイオリアクタで未滅菌の培養液を用いた藍藻培養を行った。藍藻野生株を用いて培養を行ったところ,培養開始約3日で藍藻細胞密度が激減し検出限界以下となった。この時の培養液を観察してみると,捕食者P. malhamensisが混入し藍藻を捕食している様子が確認されたため,藍藻細胞密度の激減は捕食によるものだと考えられた。一方,藍藻伸長株を用いて同様の培養を行ったところ,培養系内にP. malhamensisの存在が確認されたにも関わらず1か月に渡り藍藻細胞数を維持することができた。これは藍藻伸長株が100 Lスケールの大型培養においても捕食耐性を発揮することを示しており,伸長株の実用培養における有用性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,捕食圧下における藍藻細胞の伸長化現象について,その原因である遺伝子変異と伸長形態との関係を明らかにした。また,大きさゆえに捕食されにくい性質(捕食耐性)を有する藍藻伸長株を用いることで,100 Lスケールの大型培養においても捕食被害を低減できることを示した。以上の結果を投稿論文として発表した(Toda et al., 2024)。しかしながら当初予定していた,藍藻伸長株の細胞壁構成や代謝などの解析に関しては進捗が得られなかった。原因として,2024年度に予定していた藍藻伸長株の大型培養に関する解析を今年度行ったことが挙げられる。そのため,2023年度に実施できなかった内容については2024年度に実施できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は研究計画に従い,伸長形態を培養工学的に利用できるか検証する。また,本技術の実用性を検証するため,物質生産株に対して本捕食対策手法を適用できるか検討する。その際に伸長形態細胞による物質生産性も計測し,伸長形態が代謝系におよぼす影響も調べる。
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Causes of Carryover |
本年度は藍藻伸長株の捕食耐性に着目して研究を進めたため,2024年度に実施計画していた大型培養を前倒して行った。そのため本年度実施計画していた,伸長株の細胞壁や代謝系の解析を行うことができず,次年度使用額が生じた。本年度実施できなかった内容については既に予備実験を進めており,期間中に完了する見込みである。
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