2023 Fiscal Year Research-status Report
茶の品質を左右するトライコーム形成及びポリフェノール合成制御機構の解明
Project/Area Number |
23KJ1651
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
若松 寿衣 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | トライコーム / 茶 / 表皮細胞 / CsCPC |
Outline of Annual Research Achievements |
収穫前の茶葉を2週間ほど遮光すると、茶葉の旨味成分(テアニンやアミノ酸等)が増加し、えぐみの少ない高品質な茶葉になることが明らかになっている。しかし、遮光が茶葉のトライコーム数などの表現型に与える影響については解明されていなかった。シロイヌナズナではCPCと呼ばれる転写因子がトライコーム形成を制御することが明らかになっている。申請者らは、これまで茶においてシロイヌナズナのCPCホモログが茶で6つ(CsCPC-1,CsCPC-2,CsETC1-1,CsETC1-2,CsETC3,CsTRY)存在することを明らかにし、これらをCsCPCファミリーと名付けている。本研究では、茶の生産現場で慣行されている遮光作業が茶葉に与える影響について、表皮細胞およびトライコーム形成を制御するとされるCsCPCファミリーに注目して研究を行った。広島大学圃場にて栽培している茶品種”さえみどり”を3週間遮光した茶葉と、遮光していない露光条件の茶葉を各成長段階別(若葉から成熟葉)にサンプリングし実験で使用した。表現型観察から、遮光により第一葉(若葉)のトライコーム数が減少していることが明らかになった。また、茶葉の切片を作成し、断面図を観察したところ、露光条件に比べて遮光条件の茶葉の表皮細胞は薄くなっていた。6つのCsCPCファミリー遺伝子の発現をリアルタイムPCR法で解析したところ、CsCPC-2、CsETC1-2,CsETC3の3つの遺伝子発現が遮光によって増加していたことを明らかにした。以上の結果より、CsCPC-2、CsETC1-2,CsETC3遺伝子は遮光によって発現量が上昇し、第一葉のトライコーム形成を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にある遮光が表皮細胞分化に与える影響を解析した研究内容は、2024年2月にScientia Horticalturae誌に掲載した。より詳しく遮光が茶葉のトライコームに与える影響について解析するために、次世代シーケンスを行っており、現在データの解析中である。また、モデル植物シロイヌナズナを用いたCsCPC形質転換体の作出を試みている。過剰発現プロモーターに6つのCsCPCを挿入したプラスミドを既に作製しており、現在は形質転換体のホモラインの確立と同時に、6つのCsCPC各々がシロイヌナズナのCPCの機能を救済するのか、経過観察中である。以上のことから、本研究の進捗は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナの野生型(Col-0)及びcpc欠損変異体に6つのCsCPCをそれぞれ導入し、トライコーム数の変動やアントシアニン合成関連遺伝子発現に与える影響について解析を行う予定である。シロイヌナズナでは、CPC転写因子が他の転写因子(bHLH転写因子やWD40転写因子)と結合し複合体を形成することで、トライコーム形成を抑制することが明らかになっている。そこで、イーストツーハイブリット法を用いて、CsCPCでも同様なタンパク質結合が起こるのか検証する。また、次世代シーケンス解析で得られたデータをもとに、CsCPC以外の遺伝子で茶のトライコーム形成に関与すると思われる遺伝子を選抜する。
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