2023 Fiscal Year Research-status Report
The role of testosterone signaling in microglia: a potential role for sex differences in Alzheimer's Disease
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23KJ1699
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杜 海妍 九州大学, 歯学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | アルツハイマー型認知症 / 性差 / オートファジー / アミロイドβ / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、テストステロン-GPRC6Aシグナルによる脳内の神経炎症制御機構を明らかにして、このシグナルがAD発症・進行の性差を規定する一因であると示すことを目的とする。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。1)培養液中にアミロイドβを添加し、オートファジーを亢進させたMG6細胞において、テストステロンはオートファジーをさらに亢進させることを明らかにした。アミロイドβはMG6の細胞内に取り込まれており、オートファゴソームマーカーと共局在していることを示した。これは、テストステロンがオートファジーによるアミロイドβの分解処理を促進させることを示唆している。2)テストステロンは、MG6細胞におけるERKシグナル伝達経路を抑制することを明らかにした。ERKシグナルmTORシグナル伝達経路を活性化し、オートファジーを抑制する。テストステロンはこの経路を抑えることによってオートファジー機構を亢進させていることが明らかになった。GPRC6Aをノックダウンした細胞ではこの効果は見られなかったことから、テストステロンの作用はGPRC6Aを介したものであると考えられる。3) 6ヶ月齢のアルツハイマー型認知症モデルマウス (5xFAD)の脳切片を比較したところ、オスのアミロイドβ蓄積量はメスに比べて有意に少なかった。しかし、精巣を除去してテストステロン量を減少させたところ、アミロイドβの蓄積はメスと同程度にまでした。これらの結果はテストステロン減少がアミロイドβの分解に重要な役割を果たしており、アルツハイマー型認知症の発症・進展における性差の一因であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テストステロン-GPRC6Aシグナル伝達経路がミクログリアにおけるオートファジーを亢進することを明らかにした。また、アルツハイマー型認知症モデルマウスの脳において、ミクログリアがオートファジー機構によってアミロイドβを処理していることを示し、テストステロンによってそれが亢進する可能性も示すことができた。テストステロンの効果について、さらなる検証が必要ではあるが、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)精巣を除去した5XFADマウスにおけるアミロイドβの蓄積がテストステロン欠損によるものであることをさらに証明するため、精巣除去手術後にテストステロンを補充する実験を行う。テストステロンの補充によってアミロイドβの蓄積量が偽手術群と同程度まで減少することを検証する。2)マウスミクログリア由来細胞株にアミロイドβを取り込ませ、テストステロンによってその量が減少することをFACS解析によって示す。また、マウスミクログリア初代培養細胞をアミロイドβおよびテストステロンで刺激し、初代培養細胞でもテストステロンがオートファジーを亢進させることを免疫蛍光染色によって示す。3)ミクログリア特異的なGPRC6A欠損マウスを用いてテストステロンの作用に関する解析を行う。5xFADマウスと掛け合わせることによって、テストステロンによるアルツハイマー型認知症の発症・進行抑制効果はGPRC6Aを介したものであることを示す。
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Causes of Carryover |
ヒト ミクログリア由来細胞株 HMC3を購入する予定であったが、手続きの関係で年度内の納品が難しかったため、次年度使用額が生じた。次年度、HMC3細胞を購入し、ヒトのミクログリアでも同様の結果が得られることを検証する予定である。
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