2023 Fiscal Year Research-status Report
転流機構と群落不均一性に基づく次世代収量予測:収量構成情報の変動・分布の可視化
Project/Area Number |
23KJ1707
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中井 鴻美 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 転流 / 光合成産物 / イチゴ / 果実成長モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
植物において,光合成の場であるソース(葉)からシンク(果実等)へと師管を介して光合成産物を輸送・分配する転流は,器官の成長や物質集積を支配し,作物の収量や収量を直接決定づける重要な生理的機能である.本研究は,環境制御や栽培管理における生産者の意思決定を支援するための動的な収量予測として,転流機構に基づいたプロセスモデルと統計的手法を統合した新たな果実成長・収量予測技術の開発を目的としている.研究は,イチゴを材料植物として,①群落ローディングモデルの構築,②果房アンローディングモデルの構築,③モデルの統合の3段階で実行する.今年度は②の達成に向けた以下の実験・解析を行なった. ②の果房アンローディングモデルは,転流プロセスに基づく果実成長モデルと果房構造モデルから構築される.転流は果房構造に依存するため,はじめに構造を単純化した果実成長モデルを構築し,その後,果房構造を考慮したモデルに拡張する必要がある.本研究ではイチゴを対象に,糖代謝に基づいて果実の成長に伴う糖濃度変化を予測するSUGAR modelを用い,果房構造を単純化した果実成長モデルを構築した.モデルパラメーターは,第一果房の一番果を開花後日数5日おきに採取し,測定した生体情報(新鮮重・乾物重・果実糖濃度)から同定した.構築したモデルにより推定した果実糖濃度は果実の成長初期から中期では実測値の動態を概ね良好に再現したが,成長後期は過小評価した.今後は,推定精度の向上のためにモデル構造を検討するとともに,果房構造を考慮したモデルへの拡張を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のうち,①群落ローディングモデルの構築には至っていないものの,課題達成に資する成果をまとめて英文雑誌に原著論文として投稿・受理されている.また,②果房アンローディングモデルの構築に向けた実験・解析を行ない,学会においてその成果を発表しており,英文雑誌に原著論文として投稿予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今年度で構築した転流プロセスに基づく果実成長モデルの推定精度の向上を図るとともに,果房構造を考慮したモデルへと拡張し,果房アンローディングモデルを構築する.また,群落ローディングモデルの構築と併せて,群落スケールでの収量構成情報(果実数,果実サイズ ,糖度)の変動・分布の予測技術を確立する.
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Causes of Carryover |
令和5年度中の本研究課題に関する投稿の投稿が1件にとどまってしまい,論文投稿のために計上していた分の差額が次年度使用額として生じた.使用計画としては,令和6年度分として請求していた内容は変わらず,次年度使用額も論文投稿用の費用として使用する.
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