2023 Fiscal Year Research-status Report
新規単分子圧電素子の開発に向けた積層π共役単分子接合の伝導特性に関する理論的研究
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23KJ1708
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡澤 一樹 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 積層芳香族性 / フロンティア軌道論 |
Outline of Annual Research Achievements |
π共役単一分子接合をビルディングブロックとする集積回路を実現するためには、高い電気伝導性を持つワイヤーや高いON/OFF比を示すスイッチングデバイスを設計する必要がある。高い電気伝導性を持つワイヤーの候補として、反芳香族分子が注目されている。しかし、反芳香族分子は狭いHOMO-LUMOギャップを持つため、不安定であることが知られている。反芳香族分子を安定化するための戦略として、2つの反芳香族分子の積層により発現する「積層芳香族性」を利用する戦略が注目されている。しかし、その発現条件及び積層芳香族性発現による電気伝導への影響については明らかになっていない。本研究では、積層芳香族性の発現メカニズム、及び積層芳香族性が与える単一分子デバイスの電気伝導特性への影響についてフロンティア軌道論及び数理化学的アプローチから明らかにし、実現可能な積層芳香族単一分子デバイスを提案する。 当該年度は、密度汎関数理論(DFT)計算を用いて、face-to-faceスタッキングした反芳香族分子二量体における積層距離と積層芳香族性の関係の検討を行った。我々は、2つの反芳香族分子の間に一定以上の軌道相互作用が生じることにより積層芳香族性が発現することを明らかにした。フロンティア軌道論に基づいた解析により、ある距離までモノマーユニット同士を近づけると、ユニット間において反結合的な二量体のHOMOとユニット間において結合的な二量体のLUMOが入れ替わることが明らかになった。この分子軌道の交替は、モノマーユニット間の結合強度を大きくし、それによって積層芳香族性が発現すると示唆される。さらに、我々はモノマーユニットのHOMO-LUMOギャップをエンジニアリングすることで積層芳香族性が発現する距離を制御することが可能であることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子化学計算により、反芳香族分子の積層距離と積層芳香族性の発現との関係を明らかにした。積層芳香族性の発現距離は、反芳香族分子単量体のHOMO-LUMOギャップによって決定することをフロンティア軌道論に基づくアプローチから見出した。さらに、積層芳香族性を示す分子を理論的な立場から提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
積層π共役分子接合において、積層芳香族性が及ぼす電気伝導性への影響を解析する。さらに、ヘテロ原子を含んだ反芳香族分子における積層芳香族性及び電気伝導性を解析する。
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